「未婚男性の金がないから結婚できない問題」については、何度かこの連載で取り上げてきました。確かに、生涯未婚率が上昇しはじめた1990年代以降、20~30代男性の平均給与は30年間ほぼ変わっておらず、そうした経済状況の影響はないとは言えません。2017年就業構造基本調査においても、20~50代の未婚男性の年収は400万円未満が7割以上を占めています。
結婚とは経済生活でもあるわけですから、当然夫婦や家族生活の維持に必要な「経済力」は大事です。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査では、18~34歳までの独身者に対して「結婚相手の条件」を聞いていますが、女性が重視・考慮するポイントとして「男性の経済力」は、1997年から2015年まで一貫して90%以上をキープしています。
こうした状況から、低収入未婚男性の中では「結婚どころか、恋愛段階においても収入で足切りされてしまう」という嘆きも聞かれます。そもそも、恋愛においても、男性の経済力は影響を受けるのでしょうか?
年収別に今までの付き合ってきた人数(恋愛経験人数)との相関を20代の未既婚男性で比較してみました。
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これによると、確かに年収が高くなるにつれて恋愛経験人数も増えていることがわかります。年収と恋愛人数とは正の相関があり、恋愛もまた年収次第というようにも見えます。
しかし、既婚男性を見ると、年収200万円台で恋愛人数4人を突破し、以後年収800万円台くらいまでほぼ変化がありません。年収900万円がもっとも恋愛人数が多く、「やっぱり年収が高いほうがモテるではないか」と思われるかもしれませんが、20代で年収900万円を超えるのは、全国的には0.4%しかいません。希少層なので、ここは考慮に入れないほうがよいでしょう。
要するに、20代のうちに結婚する男性というのは、自身の年収の多寡に関係なく恋愛経験を積んでいるということになります。言い換えると、恋愛できるかできないかは、男性の年収とは関係ないということです。
既婚男性と比べると未婚男性は恋愛人数が低くなります。このグラフでは、恋愛経験あり(=1人以上付き合った相手がいる)の未婚男性と、なし(今まで一度も恋愛したことがない)を含む未婚男性とで分類していますが、前者だけを見ると、既婚男性ほどではないですが、それでも年収200万円台から恋愛人数が3.6人となり、600万円台まで横ばいです。
つまり、未婚男性の恋愛人数の平均値を下げているのはこの「今まで一度も付き合った経験のない男性たち」となります。
そうはいうものの、20~30代で「今まで一度も付き合った経験のない」割合なんてそう多くはないだろうと思うかもしれません。実は、20代で27%、30代でも24%の男性が該当します。40~50代でも約20%がそうで、年代があがってもそれほど減少していません。
未婚化を若者の草食化のせいにする言説がメディアを騒がせますが、20代と50代でそれほど差があるわけではないのです(参照:『20代男性より中年世代の「草食化」が深刻な訳』)。2015年の国勢調査における生涯未婚率(45~54歳の未婚率の平均)は男性23.4%です。
つまり、生涯未婚のうち9割近くの男性は、未婚どころか未恋愛者である可能性が高いということです。2015年での50歳とは、1985年に20歳を迎えた世代で、「新人類世代」と呼ばれます。この世代でさえ、生涯未婚のうちの9割が結婚どころか誰とも付き合ったことがないという事実のほうが衝撃ではないでしょうか。