では、既婚男女は結婚に至るまでどれくらいの恋愛人数を経てきたのでしょうか。ご夫婦でも、相手が今まで何人と付き合ってきたかをご存じの方は少ないと思います。
そもそもそんな質問をしたら「なんでそんなことを聞くの?」と勘繰られ、質問に答えようが拒否しようが、結局面倒くさい場面しか生まれない予感がします。仮に、そういう話をオープンに言い合える関係性だったとしても、それが真実かどうかは確かめようがありません。
1都3県20~50代の未既婚男女約1万5000人に対して行った調査に基づき、未婚と既婚のそれぞれ年代別に今まで付き合ってきた人数(恋愛人数)の平均値を出してみました。それによれば、ある法則が浮かびあがってきます。それは、未婚と既婚とを分ける「3.68人の壁」です。
グラフにあるとおり、未婚男女の平均恋愛人数は、性別年代によって多少のばらつきはありますが、50代未婚女性以外はすべて3.68人以下です。一方、既婚男女はほぼすべて3.68人以上の恋愛人数となっています。
これは、数学者マーチン・ガードナー氏などの研究者が提唱している「36.8%の法則」と呼ばれるものです。
例えば、結婚相手を探すにあたって10人の相手とお見合いする機会があったとします。しかし、10人を横並びにしてあなたがその中から1人を選択することはできません。実際の恋愛においても、10人同時に付き合うことはできないからです。
1人ずつ順番にお見合いして、あなたはその都度、そのお見合い相手と結婚を決断するか、次の相手に移行するかを選ばないといけません。お見合いを続けていく中で「この人に決めた」という決断をした時点で、残りの候補者とは会うことはできなくなります。
また、最後まで誰も選択しなかった場合は、10人目の相手と自動的に結婚することになります。10人全員を見てから、「やっぱり2番目の人がよかった」というわがままは許されません。
さて、そういうルールで結婚相手を決めなければいけないとしたら、何人目の相手を選択するのがベストな選択なのか、それを数学的に解明したのが、この「36.8%の法則」なのです。
候補者全体の36.8%を超えないうちは、お見合いを続け(候補者が10人のこの場合は3人まで決断しない)、そのあと、「それまで会った3人の中でいちばんよかった人」を基準とします。4人目以降で、その基準を上回る候補者にめぐりあったら、その人こそあなたが選ぶべきベストな相手である確率が最も高いということです。
これは男性に限らす、女性でもそうですし、就職採用などの場合でも同様です。この理論のもともとは「秘書採用問題」として研究されたものです。
とはいえ、結果論として、いちばん最初に会った人が一番相性のよかった人である可能性も当然ありえますが、先のグラフで提示したように、世の既婚者の過半数が3.68人目以上の相手と結婚していることも事実です。婚活中の男女は、もし今まで3人との恋愛経験がある場合、次に付き合う人が運命の相手かもしれません。
だからといって、「結婚するためには最低3人以上との恋愛経験が必要」などという暴論を言うつもりもありません。50代既婚者でいえば、現在の配偶者以外恋愛相手はいなかった(最初の恋愛相手が今の配偶者)という既婚者の割合は男15%、女12%も存在します。
この全員がお見合い結婚だと断言はできませんが、50代の世代が20代だった1985年頃は、まだお見合い結婚率が18%ほどありました。一度も恋愛経験のない男女でもマッチングさせたお見合いというシステムがあったからこそ結婚できた人がいたとも言えます。
このように見てくると、「金がないから結婚できない」という経済的な理由だけにフォーカスされがちですが、そもそも放置していたら今も昔も2割は恋愛をまったくしない可能性があり、お見合いのようなシステムがなければその2割はそのまま生涯未婚として残るという計算も成り立ちます。
恋愛したくてもできない層ばかりならば、それは何らかの手立てが必要かもしれませんが、そもそも恋愛というものに「興味がない・面倒くさい」という層が一定数存在すると考える視点も重要です。
『「独身の9割が結婚したい」説の根本的な誤解』という記事で書いたとおり、未婚男女のうち結婚に前向きなのは男4割、女5割にとどまります。それは近年急に増えたわけではなく、少なくとも1980年代から30年間変わっていません。
自由恋愛というのは、「自由に恋愛できる」ということでもありますが、「恋愛しないことも自由」であることを意味します。お見合いというお節介システムが消えゆく現代、未婚化が進むのは当然の結果なのかもしれません。