自分が制御できない事を不安に思ってもムダな訳

どうしようもない「不安」に襲われたときの処方箋とは?(写真:Kazpon/PIXTA)
「新型コロナウイルスの出現によって急激に変わる世の中において、未来を想像して不安がることは意味がない」と語るのは「プレゼンの神」と呼ばれる元マイクロソフト業務執行役員の澤円さん。その理由とは? そして不安に襲われたときにはどうしたらよいのか? 最新刊『「やめる」という選択』から一部抜粋、再構成して紹介します。

コロナとともにやってきた「一億総不安社会」

一向に収まることのない新型コロナウイルス感染症は、僕たちの「当たり前」を大きく変えてしまいました。以前には考えられなかったさまざまな、そして劇的な変化には、戸惑いとともに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

ここでは、多くの人が抱えがちな「不安」について、お話しします。

僕は、不安という感情に振りまわされないためには、自分が「コントロールできて、かつ重要な部分」に集中することがなにより大切だと考えています。コントロールできないことに振りまわされてしまうから不安が生まれ、埋没コストとして自分を苦しめてしまうのです。

冒頭にも書きましたが、とくに新型コロナウイルス感染症が拡大したのち、自分の将来や仕事について心配したり不安になったり、あるいはいわゆる景気の動向を気にしたりする人が増えているのも事実です。

ただ僕は、景気を気にすることと自分の人生を気にすることはまったく別物だと考えています。景気はいわば天気のようなもので、強い雨が降っているからといって自分の人生が終わってしまうかというと、そんなことはありません。

要するに、天気は天気として存在しているように、景気も景気として存在しているだけととらえているのです。

僕はチームマネジメントに関して、とくに強調したいのが「コントロールできることに集中しよう」ということです。これはアンガーマネジメント(怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング)の概念でもあり、「コントロール可能で重要なこと」にリソースを集中させるのがマネジメントの本分なのです。

コントロールできないことにリソースを割くのはコストであり、はっきりいえば「無駄」です。その部分に集中することでなにか貴重なものを得られるならいいですが、実際は、それこそ景気を気にしたところで、それをコントロールすることはできません。

人生は景気の影響を受けないという意味ではなく、「その影響を気に病むのはバカらしい」ということです。

繰り返しになりますが、大切なのは自分がコントロールできて、かつ重要な部分に集中すること。もしかしたら、そのコントロールできる部分が景気の影響を受けると考えるのかもしれませんが、そんな状況においても、自分の振る舞いを変えることでコントロールできることはないか? 自分のクオリティー・オブ・ライフを上げるためになにができるか? そんな思考と選択が重要です。

ビル・ゲイツは、1981年にこんなことを予言したといわれます。

「パソコンは未来永劫640キロバイト以上のメモリを必要としない」

約40年前、彼は、パソコンは640キロバイトのメモリがあれば、あらゆることができると断言したのです。しかし現在は、64ギガバイトのメモリが、数回のクリックで手元に届く世の中になっています。でも当時は、64キロバイトのメモリを積んだパソコンですら高価なものだったので、その10倍のメモリがあれば……と考えたのでしょう。

ならば、ビル・ゲイツがパソコンのことをよくわかっていなかったのかというと、そんなはずはありません。そうではなく、誰がやるにせよ未来の予測はそれほどあてにならないということです。