Dさんは、会議が終わろうとするタイミングで、議論を蒸しかえしたり、新たな質問を投げかけたりする人にイライラします。Dさんには、「場を乱さないように配慮したり、摩擦や衝突を最小限にしようとしたりする才能のタネ」があると感じます。だから、空気を読まない人の行動が理解しづらいのです。
このように才能のタネにはさまざまな種類があり、目立って現れるものばかりではありません。才能という言葉からはオリンピック選手に選ばれるような身体能力や、世界的な音楽コンクールに入賞するような華々しい芸術センスをイメージするかもしれませんが、そこから一旦離れてください。
ただ、そこまで極端でなくとも、才能のタネは育て方次第でこれまであなたが想像すらしなかったような成功に導いてくれる武器になりうるのです。
では、「イライラ」な事態が起きたときに、才能のタネを見つけるコツを紹介します。ぜひ実践してみてください。
自分があたりまえにできること、当然のように気づくことに、あなた自身の才能が隠されています。常識とは、自分の才能の組み合わせでつくられるもの。自分の常識から外れる行動をする人を見たときにイライラは生まれます。「なんで、そんな簡単なこともできないんだ!」「なんで、こんなに重要なことに気づかないの?」と怒りを感じるわけです。
イライラしてしまったら、これは機会とばかりに、書き留めておきましょう。
自分自身がイライラした瞬間を冷静に捉え、振り返る取り組みは、良好な人間関係の構築やアンガーマネジメントにも役立ちます。
例えば、「ものごとを完遂させる才能のタネ」がある人は、とにかく早くプロジェクトを終わらせようと努力します。反対に、「次々とアイデアを思いつく才能のタネ」のある人は、「もっとこんな新しいやり方がある」「これまでにない素晴らしい切り口を発見した!」と何度もちゃぶ台をひっくり返そうとします。前者から見れば、後者の行動が信じられません。同じチームで一緒に仕事をしていると「なぜ、いまさら、そんな提案をするんだ!」と新たなアイデアが出てくるたびにイライラしてしまいます。
しかし、このイライラの原因が、お互いが持っている才能のタネが異なることに起因しているとわかったら、どうでしょうか。
「私がイライラしているのは、私自身に、ものごとを完遂させる才能のタネがあるから」「相手が何度も新しい提案をしてくるのはアイデアを思いつく才能のタネがあるから」とお互いの強みを認識できるのです。
人は、見えないものが見えるようになり、わからなかったことがわかるようになると、不安感が軽くなります。不安や疑念から生じる怒りも幾分かやわらぎます。才能のタネの違いに気づけたなら、この事態を収拾するために、「早く終わらせようという気持ちを少し抑えてみよう」「思いついた新しいアイデアを次々と提案するのを少し待ってみよう」と理想的な働きかけができるようになるのです。
こんなふうにネガティブな感情が湧いたら、自分の才能のタネを知る絶好の機会です。
イライラの裏側に隠れている才能のタネに目を向けてみましょう。
人から「ありがとう」という言葉をかけられたとき、頼られ感謝されたとき、少し立ちどまって、考えてみてください。もしかしたら、「ありがとう」の言葉をもらったその行為に、あなたの才能のタネが隠されているかもしれません。