「具体的な内容」と「抽象的な内容」は、「具体→抽象」という流れで書いていきます。具体的な事柄をあげた後、まとめとして抽象的な内容で締めると、日本語の文章として自然な流れをつくることができます。先述したように、ここでも「ポイントはうしろ」です。
例題で見ていきましょう。
まずゴールを決めます。ここでは「レジ袋の有料化はプラス」という方向で文章を書いていくことにします。次に、そのための具体例をいくつかピックアップします。
このような魚に取り込まれた小さなプラスチックは巡り巡って、魚を食べる私たちが摂取することになる。プラスチックゴミによる海の汚染を止めるために、レジ袋の有料化は役に立つ。使用量が減れば、ゴミも減るからだ。レジ袋の有料化は、地球環境と私たちの健康を守り、持続可能な社会をつくるために、私たちが今すぐできることなのだ。
具体的な内容を最初に3つあげ、最後に抽象的な内容でまとめています。意見を述べるときには、このように「具体 → 抽象」の流れにすると、すっきりとしたわかりやすい文章になります。
また、アイディアが思いつかないときには、できるだけたくさん具体例を列挙していくと、思考の手がかりを得ることができます。試験問題で時間がないときなどは、具体例を使って書き始めると、自ずと結論が見えてくるものです。いきなり抽象的な思考をするのは難しくても、具体例ならずっと出しやすいはずです。
このように、具体的な事柄から一般的な理論に持ち込む思考法は「帰納法(きのうほう)」とよばれます。
私がしつこく生徒に「具から抽!」と伝えているのは、抽象論だけを展開する生徒が一定数いるからです。とくに東大をめざすような子は、抽象論を操ることが得意で、それだけで解答を仕上げてきたりします。一見よさそうな文に見えるのですが、読んでもすっきりと頭に入ってきません。読み手が実感を持てず、納得度が低いのです。読み手を納得させられない文章は、いい文章とはいえません。
先ほどの「レジ袋の有料化をどう考えるか」について、抽象論だけで展開した解答を、参考のために見ていきましょう。