「書くこと」が苦手な人が知らない「文章の型」

「具体的な内容」と「抽象的な内容」は、「具体→抽象」という流れで書いていきます。具体的な事柄をあげた後、まとめとして抽象的な内容で締めると、日本語の文章として自然な流れをつくることができます。先述したように、ここでも「ポイントはうしろ」です。

例題で見ていきましょう。

<例題>
2020年7月からスーパーやコンビニにおいて、レジ袋が有料化されました。このことについて、あなたの考えを書きなさい。

まずゴールを決めます。ここでは「レジ袋の有料化はプラス」という方向で文章を書いていくことにします。次に、そのための具体例をいくつかピックアップします。

<具体的な内容>
ウミガメなどの生物がプラスチックゴミの犠牲になっていること。
海で分解されたマイクロプラスチックが問題となっていること。
プラスチックのストローがなくなっても、困らなかったこと。
<抽象的な内容>
地球環境と私たちの健康を守るため。
持続可能な社会をつくるため。
<解答例>
最近、プラスチックのストローを見なくなった。コンビニのアイスコーヒーは、直接飲む形にいつのまにか変わっていた。このようなプラスチックを減らす動きは、世界的な規模で進んでいる。それはなぜか。ウミガメなど海の生物の内臓から、餌とまちがえて食べたプラスチックゴミがたくさん見つかっており、それをなくす必要があるからだ。それだけでなく、海で分解されて小さくなったマイクロプラスチックが、小さな魚にも摂取されていることがわかってきており、それを防ぐ必要があるからでもある。

このような魚に取り込まれた小さなプラスチックは巡り巡って、魚を食べる私たちが摂取することになる。プラスチックゴミによる海の汚染を止めるために、レジ袋の有料化は役に立つ。使用量が減れば、ゴミも減るからだ。レジ袋の有料化は、地球環境と私たちの健康を守り、持続可能な社会をつくるために、私たちが今すぐできることなのだ。

具体的な内容を最初に3つあげ、最後に抽象的な内容でまとめています。意見を述べるときには、このように「具体 → 抽象」の流れにすると、すっきりとしたわかりやすい文章になります。

また、アイディアが思いつかないときには、できるだけたくさん具体例を列挙していくと、思考の手がかりを得ることができます。試験問題で時間がないときなどは、具体例を使って書き始めると、自ずと結論が見えてくるものです。いきなり抽象的な思考をするのは難しくても、具体例ならずっと出しやすいはずです。

このように、具体的な事柄から一般的な理論に持ち込む思考法は「帰納法(きのうほう)」とよばれます。

抽象論だらけの文章に注意!

私がしつこく生徒に「具から抽!」と伝えているのは、抽象論だけを展開する生徒が一定数いるからです。とくに東大をめざすような子は、抽象論を操ることが得意で、それだけで解答を仕上げてきたりします。一見よさそうな文に見えるのですが、読んでもすっきりと頭に入ってきません。読み手が実感を持てず、納得度が低いのです。読み手を納得させられない文章は、いい文章とはいえません。

先ほどの「レジ袋の有料化をどう考えるか」について、抽象論だけで展開した解答を、参考のために見ていきましょう。

<抽象論だけの解答例>
海は生物多様性の宝庫である。さまざまな生物が、海のなかに暮らしている。その海の自然が、プラスチックゴミによって失われようとしている。このように海の汚染が進めば、水産資源の豊かさが失われるだけでなく、絶滅の危機にある生物の存続も危うくなるだろう。魚を消費する私たちは、この問題に無関係ではない。自然の破壊はあっという間だが、回復には気の遠くなるような時間がかかる。美しい海を未来へと引き継ぐために、今の私たちができることをしていかなければならない。レジ袋の有料化は、海を守り持続可能な社会を実現することに貢献するはずだ。