いじめのピークは「小2」低年齢化の衝撃の実態

いじめや不登校を20年にわたり取材している『不登校新聞』の編集長が、子どもたちの実態をお伝えします(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/ PIXTA)

学校でのいじめというと何歳くらいが多いイメージがあるでしょうか。最新の調査を聞くと多くの人が驚くかもしれません。

文科省の調査によると、小学校2年生がいじめのピークであることがわかりました。

また、コロナ禍でいじめが増えていくことが予想されています。『不登校新聞』の編集長としていじめや不登校を20年にわたり取材してきましたが、子どもたちの実態をお伝えします。

小1から陰湿ないじめが

eスポーツの分野で活躍中の永田大和さん(19歳)は、小学校2年生から小学校4年生にかけていじめを受けていました。

「同級生からは『居ない者』として扱われることが多かったです。ほかのも、物を隠されたり、心当たりのない噂を流されたりすることもありました。殴る、蹴るという暴力もありましたが、多かったのはそういうネチネチしたやつでした」

無視や噂話などのいじめは「コミュニケーション操作系のいじめ」と呼ばれています。その特徴は見えづらいこと。殴る・蹴るといった見えやすい暴力ではなく、被害や攻撃性が見えにくい言わば「陰湿ないじめ」です。陰湿ないじめといえば中高生というイメージが私にはあります。むしろ見た目もかわいい小学生がまさかそんな陰湿ないじめをするとは思ってもいませんでしたが、永田さんと同様の陰湿ないじめのケースも最近は聞くようになってきました。

今年、小学5年生になった男児は、小学校の入学当初からいじめを受け始めていました。男児が言うには同級生から「間接的に否定されることが多かった」と。具体的には(1)鬼ごっこの際にずっと鬼にさせられる、(2)遊びの拍子に強く殴られる、(3)「赤ちゃんみたいだね」など意図がわかりづらい言葉で否定されるなどです。

いじめのストレスから、男児は寝ているあいだに歯ぎしりがひどくなり、ある日、大泣きして学校へ行きたくないと母親に訴えたそうです。男児はいじめを訴えると「みんなの空気が悪くなる」と思って黙っていたそうです。

小学校にとどまらず、幼稚園から「コミュニケーション操作系のいじめが始まっていた」と語るのは現在20歳の女性でした。女性は幼稚園のころから、仲間外れなどのいじめを受けていたため、小学校に入ってからは、いじめられないキャラを研究。その後は「自分を取り繕うように生きてきた」と話してくれました。

仲間外れや無視などの陰湿ないじめは小学校低学年でも確実に起きており、最近の文科省の調査をみると、それが広がっているという傾向が顕著に表れていました。

2019年度に起きた小・中・高のいじめは61万2496件。学年別でみると、もっとも多いのは「小学校2年生」。ちなみに10年前の調査結果を見ると中学1年生がピークでした。多くの人の感覚と近い調査結果だと思いますが、現在はトップ3が小学校1年生から3年生が占めるなど、いじめの低年齢化は顕著なのです。

(出所)文部科学省のデータより筆者作成

専門家の指摘を総合すると、いじめの低年齢化が進んだ要因は2つです。

ひとつは調査の定義が変わったこと。ひやかしや悪ふざけといった軽微な事例も報告するよう文科省が求めており、これに応じて小学校低学年のいじめ件数は増えました。ある小学校教員によれば、そもそも小学校低学年の場合の子たちによる人間関係のトラブルはよく起きていたそうです。

もうひとつの要因は、小学校低学年の子どもたちが感じるストレスが増加したことです。不登校の子どもたちなどを長年にわたり見てきた西野博之さん(フリースペースたまりば)は、ストレスのあまり暴発してしまい、人間関係を築きづらい子も増えてきたと感じているそうです。