ただしこれは、労働省労働統計局が「有効活用されていない労働力」を数値化するうえで利用している6つあるカテゴリーの指標の1つにすぎない。
では、その6つのカテゴリーの指標を数値の小さいものから紹介しよう(2019年12月時点のデータ。アメリカの失業率統計は日本などとは定義が異なる部分がある)。
こうして見るとわかるように、これら6つの数値にはだいぶ差がある。公式発表される失業率③は、失業者の対象が最も広いカテゴリー⑥の半分ほどの数値でしかない。おまけに⑥は①の5倍以上の数値だ。
例えば、あなたが失業したとしよう。その場合、あなたが引き続き新たな職をさがしていなければ、失業者としてカウントしてもらえないかもしれない。求職活動をやめてしまったら、もう失業者としてはカウントされない場合があるのだ。
だから、いわゆる「真の失業率」にできるだけ近い数値を得たいのであれば、労働市場参加率(生産年齢人口に占める労働力人口の割合)を見なければならない。アメリカでは1950年に約59%で、その後、半世紀ほど上昇を続け、2000年春に67.3%のピークに達した。
ところが、そこから減少に転じ、2005年秋には62.5%にまで下落した。その後はゆるやかに上昇し、2019年末には63.2%になっている。そして当然のことながら、年齢階級別の差は大きい。労働市場参加率がいちばん高いのは35~44歳の男性で、約90%だ。
さて、ヨーロッパの失業率に目を向けてみると、ある国で住民同士がどれほど強い結びつきをもっているか、住民がどれほど個人的に満足しているかなどを、失業率から推測するのはきわめて難しいことがわかる。
ヨーロッパで失業率がいちばん低いのはチェコで、2%と少し。一方、スペインは長年、失業率が高い状態に耐えていて、2013年には26%を超え、2019年後半になっても14%を超えている。その後、わずかに減少したものの、2019年には若者の約33%が失業状態にあった。スペインで就職活動をしている人がこの数字を見れば、暗澹たる気分になるだろう。
ところが、チェコの幸福度はスペインより8%高いだけだ。一方、チェコの自殺率は10万人当たり8人強で、スペインの3倍ほど高い。それでも、強盗事件はチェコのプラハよりスペインのバルセロナでよく起こっているのはたしかだ。
ではスペインとイギリスを比較すると、どうなるだろうか。強盗事件の発生率を比べると、スペインのほうがイギリスよりわずかに高いだけだ。スペインの失業率はイギリスの4倍も高いというのに。
さあ、これでみなさんにもいくら失業率だけを見たところで、雇用や失業に関する複雑な現実は把握できないことがおわかりいただけたはずだ。
政府が公表する統計では失業者に含まれても、家族の支援や非公式労働のおかげでどうにか暮らしている人は多い。
それに統計上は完全な就業状態に当てはまるとしても、現状に不満がありながらも転職がむずかしかったりできなかったりする人も大勢いる。
たしかに、数字はウソをつかないだろう。でも、その数字をどう受けとめるかは、人それぞれというわけだ。