この世界に存在する財は、「集めると高くなるもの」と「分けると高くなるもの」が存在している。
例えば、集めると高くなるものの典型は「土地」である。日本を代表するデベロッパーである森ビルのビジネスモデルは、10年以上の時間をかけて、細かい民家が密集したエリアの土地を買い集めていき、再開発を行い、巨大ビルを建てるというものである。
なぜ土地を集めると高くなるか、それは、狭い土地であれば2階建ての民家しか建てられないところ、まとまったエリアがあれば50階建てのビルを建てられる、即ち48階分は生み出されるキャッシュフローが増大することになるからである(土地の行政区分等については捨象し単純化しているが、ご容赦いただきたい)。
一方、分けると高くなるもの、の代表例は、例えば肉や魚である。
肉や魚は、塊やサクの状態よりも、切り身になっているほうが値段が高い。実際のところカットする工数というのは大したことがないのだが、一手間かかっているという認知が働き、高い支払いを消費者が許容するわけである。
これに限らず、世の中の大半の財は、「まとめると高くなる」「切り分けると高くなる」に分割できるので、目の前の財に対してもその分類ができないか、思考実験してみることが肝要なのである。
ビジネスを行うときに見逃せないのが、当然、種銭の大きさの効果である。
種銭がデカいことの効果は非常にシンプルで、例えば自動車会社を作ろうと思うと、工場から含めて数千億円という巨額の資金が必要で、結果としてグローバルで見ても数十社というオーダーに競争相手が限定される。
つまり、資本が大きければ大きいほど、参入できるプレイヤーが限定され、結果として競争相手の数が減るわけである。
また、製造業においては多くの場合、投下資本量によって工場がどの程度効率化できるかが決まる。すなわち、資本の量が決定的な競争優位の要因になることが多いのである。
単純に説明すると、これがスケールメリットである。
一方、スモールメリットというのも存在する。
例えば人材紹介エージェントは、1人の凄腕エージェントが成約報酬200万円×20人で年間4000万円の売り上げを立てることは可能である。このエージェントが、本社機能を作らずに、自宅マンションを本社としてビジネスを行っていけば、4000万円がほぼまるまる自分のポケットに入るわけである。
しかし、この会社を組織化し、本社機能を作るとする。たいてい、雇い入れるエージェントは本人よりもかなりランクが落ちるエージェントである。当然、人件費のほかに、指導にかかる時間、オフィス費用、PCなどの備品費用などが増大し、基本的に利益率は逓減するモメンタムが働く。