数カ月前に入会面談にきた荘太(仮名、39歳)に、「婚活にとって大切なことは期間を区切り、その間は集中力を注いで活動することですよ」と、説明した。すると、こんなことを言った。
「そうか。そうだったんですね。確かに僕は、今まで期間を区切らず、ダラダラと婚活をしてきました。脳内婚活を6年もやっていました」
脳内婚活とは、何か。結婚相談所や婚活アプリに登録をして、お見合いし交際になって1度くらいは会うものの、以来、連絡を入れず、関係がフェイドアウトしていく。そして、また新しい相手とお見合いし交際になるのだが、連絡をせずに同じことを繰り返していく。行動が伴っていないのに本人の頭の中には、つねに“婚活”という言葉があるので、婚活をした気になっている。私は、そんな状態を“脳内婚活”と呼んでいる。
荘太は、自分の婚活がまさにそのとおりだったと、気づいたようだ。そして、今回は、そんな自分を改めて、期間を区切り集中して婚活をしていくと言った。
大手企業に勤め、年収も平均以上あり、体型もスリムで見た目も悪くない。ただ1つ短所を挙げるとすれば、学生時代や社会に出てからまったく恋愛経験がなかった。女性と2人きりで食事をしたりデートをしたりするのは、婚活市場に入ってからのことだ。そのため、女性にどんな頻度で連絡を入れ、どんなデートをしたらいいのかが、わかっていなかった。
脳内婚活からの脱却。マメに連絡を入れて、行動していくことを決めたようだった。
最初のお見合いは、私の相談所の会員である美加(仮名、33歳)と組んだ。彼女にはお見合いの前に、「彼は恋愛経験がないけれど、まじめで誠実だし、会社も大手だから将来的にも安定している。結婚するにはよいお相手だと思いますよ」と、伝えておいた。
お見合い後は、交際に入ったのだが、2度目のデートを終えたところで、“交際終了”が美加から来た。理由は、こうだった。
「交際になってから、毎日の出来事を日記風につづったLINEが、夜の10時前後に来るんです。なんか引いてしまいました。まだ彼のことをよく知らないし、好きにもなっていないのに、“今日は、あれをした。これをした”と、一方的に書いてこられても、ちっとも興味が持てなかった。2度ほど会って、1度目は夜に2時間くらい食事をして別れたので、まだよかったんですが、2度目のデートが、半日一緒にいたんですね。ランチをして、その後映画を観て、そこまではよかったんですが……」
ランチも映画も予定どおり進み、荘太は、その後、カフェでお茶をする計画を立てていたようだ。ところが、行こうと当たりをつけていたカフェが、やっていなかった。
「そうしたら、『どうしよう。カフェが休みだ』って、急に焦り出して。なんだかすごく余裕がない様子に感じたので、『お茶は別にしなくてもいいですよ』と言ったんだけれど、その言葉も聞こえなかったのか、スマホで近くのカフェを検索し出して、『ああ、こっちにカフェがあるな』って、横にいる私のことは無視して、ズンズン歩き出して。まじめな性格なんでしょうけど、何かその姿に引いてしまいました」