日本の政治家「話し方があまりに下手」な3理由

密室での駆け引きや談合こそが「政治」と思い込んでいる日本の老練政治家の多くが、「国民と真正面から向き合い、政策を訴え、理解を得る」ためのコミュニケーションの努力をほとんどしてきませんでした

よって、そもそも日本の政治家には「パブリック」と対話をする力が絶望的に弱いということです。平時であれば、事足りても、未曽有の危機下では「由々しき問題」です。

なぜなら、リーダーは「飛行機のパイロット」のような存在であり、有事には、操縦桿を握りながらも国民に指針を示し、その不安を鎮めるコミュニケーションを続けていかなければならないからです。

なぜ、ここまで発信力がないのか。その背景には、「リーダーとコミュ力」に関してのいくつかの大きな誤解や勘違いがあるように感じます。その中から、3つの「根本原因」を紹介しましょう。

1つ目の原因は、「リーダーに必要なのは『話す力』より『実行力・決断力』」という思い込みです。

【1】必要なのは「話す力」より「実行力・決断力」と勘違いしている

これまで1000人を超える政官財のリーダーにお会いしてきましたが、びっくりするほど数多くの人が、実は「コミュ障」です。

つまらない話を延々と聞かせる「俺の話を聞け~」タイプや、黙って何の指示も助言もない「俺の背中を見ろ~」タイプなど、さまざまですが、「言えば伝わる」「言わなくても伝わる」と思っている人が実に多い。

しかし、いかに実行力や決断力があっても、その政策、覚悟、思いを伝える力がなければ、人は動きません

前例を踏襲すればよかった時代には、内輪の折衝力さえあれば、あとは上意下達で物事が自動的に伝わっていたかもしれません。しかし、価値観も、情報伝達手段も多様化する今、どのリーダーにとっても、戦略的な「伝える力」は必要不可欠です。

これは「日本のモノづくり」にも似ています。いいものを作っても、そのよさが伝えられない。そうやって損をしているのです。

「政策を作る・実行する」「政策を伝えて、人を動かす」。これらは車の両輪であり、どちらか一方があればいいわけでも、トレードオフの関係性のものでもない。どちらが欠けてもダメなのです。

話し方は「学ぶ場+正しい知識」で上達できる

【2】「コミュ力・話す力=生まれつきの才能」と誤解している

よく言われるのが、「話す力は才能だから、仕方ない」という考え方です。しかし、コミュ力の9割は「先天的」なものではなく「後天的」です。学ぶ場と正しい知識さえあれば、誰でも必ず上達できるもの。だからこそ、欧米でエリートは、話し方を幼少期から徹底的に学ぶのです。

インド独立の父、マハトマ・ガンジーは伝記でまるまる1章分を自らの人見知りについて費やすほど、内向的でした。イギリスの名相ウィンストン・チャーチルは29歳で議会の席に立ったとき、緊張のあまり3分間しゃべれませんでしたスティーブ・ジョブズでさえ、30代前半まで、決して上手なスピーカーとは言えませんでした。アメリカの大金持ち、ウォーレン・バフェットは、20歳まで「人前で話すことを考えただけで吐きそうになる」ぐらいでしたが、のちに話し方の学校に通い、その恐怖心を克服しました。

「生まれつきの話し方の天才」など、そうそういません。話し方はいつからでも、その意志があれば、上達させることができるものなのです。

3つ目は、伝える「地道な努力」と「並々ならぬ思い」の両方が足りない、ということです。

【3】伝える「地道な努力」と「並々ならぬ思い」の両方が足りない

マハトマ・ガンジーやスティーブ・ジョブズたちはどうやって苦手意識を克服し、雄弁なリーダーになったのでしょうか。まず、「地道な努力を積み重ねたこと」が1つ目です。