寝付きが悪い人は「何が邪魔者か」わかってない

眠れない人が見逃しているかもしれない要因とは?(写真:Tero Vesalainen/iStock)
「睡眠に影響しないことは何一つない」と言えるほど、私たちが起きている時間はその日の夜の眠りに直結しています。何を食べるか、何時に運動するか、ちょっとした光――。思いも寄らない些細なことが眠りに影響していることを、スウェーデン・ウプサラ大学の睡眠研究者で『Sleep, Sleep, Sleep』の著者、クリスティアン・ベネディクト氏が明かします。

「太陽の光」が睡眠・覚醒をコントロールする

睡眠に関して、1つ結論があります。それは、「睡眠とはベッドでまどろんでいる時間だけを指すのではなく、24時間の営み」ということです。

睡眠の準備は、朝、目を覚まし、網膜に太陽の光を受け、体内時計に1日が始まるというシグナルが発せられた時点で始まります。それは、睡眠・覚醒リズムが、日光や気温といったあらゆることから強い影響を受けるからです。

また、いつ食事をし、水分を補給し、どの時間帯に運動をするのかといった一見すると眠りと関係のなさそうな行動も、確実に私たちの睡眠と結びついていることが数々の研究によりわかっています。

まず、太陽光は、睡眠・覚醒リズムにとって重要な出発点です。

外が明るくなり、覚醒の時間が始まったこと、反対に暗くなり、それが就寝の時間を意味することを私たちの体が認識できるよう、人の目は、朝と夕方、太陽光に敏感に反応するようになっています。

朝、網膜の神経細胞が太陽の光をキャッチすると、「マスタークロック」と呼ばれる体内時計の親玉が、体の各細胞にある体内時計に「1日が始まる!」とメッセージを送ります。これにより、代謝が活発になるなど体が覚醒モードに切り替わるのです。

徹夜明けでも意外と頭が冴え、四六時中うとうとすることもなく過ごせるのは、まさにこの太陽の光のおかげです。朝の光が、体内時計を刺激して覚醒のスイッチを押すため、寝ていなくても眠り落ちてしまわずにすむのです。

朝と同様、私たちの目は夕方にも光に敏感に反応します。これは徐々に暗くなっていく光をキャッチすることで、「眠る時間だ」ということをマスタークロックに認識させるため。しかし、現代の生活では、夜遅くまで部屋の明かりは灯り、パソコンやスマートフォンの光にも目は晒されています。これでは、体は睡眠モードになかなか入れず、「寝付きが悪い」「寝ても疲れが取れない」などの問題を引き起こしても無理はありません。

1日中室内にこもり、太陽の光を浴びないことでも、体は混乱します。昼なのか夜なのか分からなくなり、体は睡眠ホルモンである「メラトニン」をためらいがちに生成するように。

タイミングよく眠りにつき、安定した睡眠・覚醒リズムを形成したいなら、日中は外で多くの時間を過ごすことをお勧めします。

晴れている日は屋外に「30分」もいれば十分です。曇りなら「約1時間」が目安になります。

日中、外出する機会のない人は、窓のそばに座るのも効果的です。病院の入院患者で調査したところ、窓から1メートル以内にベッドがある患者は、それより離れたベッドの患者よりも夜の睡眠時間が1時間長く、回復も早く、退院までに要する時間が短かったことが判明しました。

また、「昼光色ランプ」も効果的で、病院の集中治療室に導入したところ、患者が30分以上長く眠れるようになりました。

運動は「午前中」に

「運動」も、睡眠・覚醒リズムを安定させ、質のよい睡眠をもたらします。

ただし、私たちの体のリズムに適したタイミングでスポーツを行うことが重要です。
睡眠・覚醒リズムを整えるには、午前中の運動がベストです。日光をたっぷり浴びることができ、それによって、夜の適切な時間に眠気である「睡眠圧」を高めることができます。