テレビ東京系ドラマ「共演NG」(月曜夜10時)が話題だ。10月26日に始まり、これまでに6回を放送。今日12月14日午後10時からの特別編をもって完結する。
弱小放送局の「テレビ東洋」がテレビ業界のタブーを逆手に取り、あえて共演NGの遠山英二(中井貴一)と大園瞳(鈴木京香)の2人の大物俳優を起用したドラマ「殺したいほど愛してる」に社運をかけるという内容だ。その制作過程で遠山と大園が巻き起こす、すったもんだをラブコメディーとして描いている。
テレビ業界の裏事情をユーモアたっぷりの演出で切り取って視聴者から好評を得ているようだ。「世帯視聴率6.6%と午後10時のドラマ枠としては過去最高のスタート」(テレビ東京・宣伝部)だという。
だが、ドラマの内容に加えて、もう一つ話題になっていることがある。毎回番組の本編終了時の「後提供」クレジットにキリンとサントリーの2社が同時に登場するのだ。同じ番組に同じ業界内のライバルが一緒にスポンサーになることはなく「テレビ業界のタブー」だ。
もちろん、長時間の特別番組などでは時間帯で提供ブロックを区切って、競合する同業他社がそれぞれのブロックを前後してスポンサー提供することは珍しくない(「ここからの放送は○○の提供でお送りします」とアナウンスが入って提供が途中で交替する)。広告業界用語で「提供チェンジ」という。だが、通常の番組ではブロックを区切らないので、相乗りすることはありえない。
CM好感度調査を毎月実施してテレビCMの効果を研究している、CM総合研究所の研究員も「20年以上の実務経験で、こういった事例は見たことも聞いたこともない。過去にさかのぼっても見つけることはむずかしいのではないか」と驚く。
この”共演”は、第1話放送直後からツイッターなどのSNSで話題となった。番組内では何の説明もないが、アナウンサーが提供社名を読み上げる際、「この番組は、どうにか共演OKになったキリンとサントリーの提供でお送りしました」と伝える。
また両社のロゴが画面内での上下位置や大きさなどを競い合うような動きを見せ、それは放送回が進むにつれてエスカレートしていく。市場で激しく競合する「共演NG」の2社を共演させるという意図的な演出であり、ドラマの設定とリンクさせた「遊び心」であることがわかる。
この斬新なアイデアは企画・原作の秋元康氏の発案だ。さまざまな業界にライバルと目されている企業が存在するが、そんな会社同士が番組提供で「共演」したら面白いという話が企画会議で出されたという。
それを受けてテレビ東京営業局も奮闘。競合2社が相乗りする前代未聞の番組提供を実現させた。
番組プロデューサーである稲田秀樹氏は次のように振り返る。
「今回、企画趣旨に共鳴した当社の営業局が非常に頑張ってくれた。テレビ業界における広告の新しい形を模索し、それをスポンサーに提供できないかと彼らも常々、考えていたようです。秋元さんにもさまざまなアドバイスをいただきながら、『共演NG』をきっかけとして具体的な発想が生まれたと言っていました。
おかげさまでドラマ以上に広告企画の部分が話題になってしまいましたが(笑)。お決まりで流している提供ゾーンでも『発信』の場になりうる。そんな可能性を示せたことはよかったと思います」
他方、スポンサー側はこの企画をどう捉えたのか。キリンビール宣伝担当の越智愛氏はこう話す。