友だちの数は多いほうがいいのか、それとも親友と呼べる人だけが数人いれば友だちなんてそれほど必要ないのか。友だちをめぐる「数」と「質」のテーマは、誰もが自分の人生で一度は考えたことがあるはずです。
このテーマは世界共通のようで、友だちに関する研究は世界各地で行われています。例えば、「交友関係が広い人ほど痛みやがまんに強い」というオックスフォード大学のジョンストンとダンバーの研究があります。
実験では、鎮痛作用をもつ神経伝達物質「エンドルフィン」が、社会的なつながりやコミュニケーションによって、どれほど脳内で分泌が促進され、効果に変化が出るかを調べました。
ジョンストンとダンバーは、「友人が多い人ほどエンドルフィンも多く、痛みに強いのではないか」という仮説のもと、18~35歳の健康な男女107人を対象に実験をしました。
まず、①外向性、②調和性、③開放性、④勤勉性、⑤神経症傾向からなる「性格5因子」から大まかに個人の傾向を調査し、その後アンケートによって、メールやSNS、電話などの毎月、毎週の頻度、さらには連絡をとる友人の数や関係性、および交友関係を調べました。
そして、被験者らにいわゆる「空気イス」(イスに座るようにひざを90度に曲げたままの状態を維持する姿勢)をさせ、痛みやがまんにどれだけ耐えられるか時間を測定しました。すると、長くがまんできる人ほど交友関係が広い傾向がわかったのです。逆に考えると、痛みやがまんに強いからこそ、交友関係が広がっていくのかもしれません。
一方で、友だちは「数」ではなく「質」を重視するという人もいるでしょう。京都大学の内田らは、友だち関係の数と質が幸福感とどう関係するかを、日本人大学生を対象に調査しました。
調査では、学生たちの生活の中で接触する人を、「家族」のような身近な人、「大学の友人」、そして「バイト先などで交流がある人」などの一般的な人間関係に分け、幸福感や身体の健康との関連を調べました。
結果、家族・親戚や大学の仲間など身近な人間関係においては、付き合いの数と質と幸福度の間にはさほど関連はありませんでした。ただ、身近な人間関係においては付き合いが多いほどストレスが少ない一方で、アルバイト先などでの一般的な人間関係は、多くなるとストレスが増えることが観察されました。これはアルバイトのような付き合いを選べない環境下では、どうしても不満がたまっていきやすいことを示唆しています。
さらに、各人に「人間関係を広く求めるか?」「狭くても心地よい関係に留まろうとするか?」と、どちらの傾向が強いかによって、数と質の評価が変わるかということついても調べました。
その結果、人間関係を広く求めるタイプの人は、数が幸福感と関係してくる一方で、狭くても心地よい関係に留まろうとする人は、質が人生の幸福度と関係してくることがわかりました。後者の傾向がある人は、無理をしてまで人間関係を広げることに幸せを見出していないというわけです。
このように、数と質、どちらがより幸せかはその人がもともと持ち合わせている人付き合いの傾向にもよるので一概に言えないでしょう。ですが、どちらにしても自分が幸せを感じたり、心が落ち着けたりできる交友関係を持つことは、不安やストレスを緩和してくれる一助となるということは忘れないでください。