経営者としての意地の部分では、「借りたお金は返すべきだ!」と思っていました。しかし、再度一から事業を立ち上げて、これだけの金額を返すことは、そう簡単ではありません。
どんなに新型コロナウイルスの影響で会社を清算したと言っても、「倒産した社長」であることに変わりはなく、再度事業を行う場合に、銀行が融資を実行してくれる可能性はゼロに等しい。そうであれば、国が促進している「経営者保証に関するガイドライン」を適用して、債務を免除した状態で再起するほうがいいはず。
とはいえ、これまで私を信用して融資を実行してくれた銀行、とりわけ担当者の方を裏切ってしまう形になるのは、心苦しくもありました。最後は、冷静に自分が置かれている状況を考え、「経営者保証に関するガイドライン」を適用する方向で会社の清算を進めることに決めました。
4月下旬、地方銀行2行、日本政策金融公庫には、会社を清算することを伝えました。 銀行とは、新型コロナウイルスの影響が出始めた頃からコミュニケーションをとっていて、返済延期や追加融資の話もいただいていました。 私にとって銀行は、お金を借りるための機関というだけではなく、私のことを信用して応援してくれるパートナーだと思っていました。応援の形が融資だったのだと。ですから、従業員に解雇通知を出す時と同じくらい、銀行に連絡を入れる時も、感情は揺れました。
1店舗目のカフェの改装費用を借りるために、事業計画書を握り締めて、初めて銀行に行ったときのことを思い出しました。 私の事業展開のために、融資を通してくれた担当の方の顔が何度も頭に浮かびました。 新店舗出店の度に事業計画を説明して、面談を重ねて店舗展開をしてきたときのことが、つい先日のように思い出されました。