お見合いは、 “結婚”という目的のもとに、見ず知らずの男女が出会うことだ。いいご縁につながるよう期待値も高いし、それだけに緊張もする。誠意をもって真摯に臨もうとしていたはずが、つい余計なことを言ってしまうことがある。また、自分の中では正解でも、聞いた相手にとったら大きくNGな話題もある。
お見合いを終えた江津子(36歳、仮名)が、すぐに“お断り”を入れてきた。相手は、福祉事業所で働く勉(40歳、仮名)だった。
「今日の方は、自分にダメ出しばかりしていて、とても疲れました。お見合い後半は、いつ話を切り上げて帰ろうか、時間ばかりが気になりました」
会話は、仕事の話から学歴の話になったそうだ。
「私は大卒でお相手は専門卒。それはプロフィールでわかっていたことだし、きちんと資格を取って専門職で働いている男性は尊敬できると思ったから、お見合いを受けたんです。それなのに、『大卒ってすごいですね。僕は大学に行かなかったことがコンプレックスなんですよ』と、会話の端々で何度も言ったんです」
あまりにも学歴にこだわるので、「どうして私にお見合いを申し込んでくださったのですか?」と尋ねた。すると、あまりにも正直な答えが返ってきた。
「今入っている相談所の仲人はご近所さんで、昔からの知り合いなんです。この間一緒に検索サイトを見ていたとき、『この女性、いいじゃない?』と勧められて、ノリで申し込みボタンを押しちゃったんですよ」
“ノリで”というのはポロリと出てしまった言葉で、勉に悪気はなかったのだろう。しかし、江津子は、自分が軽く見られている印象を拭えなかった。
「今はサイトでいくらでもお相手を検索して選べる時代だし、1人ひとりを吟味して“この人なら”とお申し込みをかけている人は少ないと思います。でも、『ノリで申し込んだ』と言われて、心底がっかりしました」
現状で言うと、サイトから20~30件の申し込みをかけて、受諾をされるのは1~3件くらいの割合が通例だ。しかし、見合いした相手に、「ノリで申し込んだ」「ダメ元で申し込んだ」は、禁句である。
「勉さんは、国家資格のある専門職だし、ご自身の仕事にもっと自信を持てばいいのに。あと、ノリで申し込んで、お見合いした相手に、『大卒はすごいですね』を連発するなら、例えノリでも、大卒じゃない女性に申し込めばよかったですよね」
これは、学歴だけではない。年収においても、「自分は稼ぎが悪いから」と見合いの席で連発する男性がいるのだが、年収はプロフィールに記載されている。それでもいいと思っているから、女性はお見合いしているのだ。
日本では、謙虚であることが美徳とされている。ただ謙虚と卑下は違う。謙虚は自信に裏打ちされたうえで自分を謙る言動だ。しかし、卑下は、自分の自信のなさを単に露呈していることにつながる。