東大生が見た「頭が柔らかい人、硬い人」の習慣

僕らは、同じものを何度も消費することがあります。僕の祖母はよく昔使っていた服の生地を使ってハンカチをつくってくれますし、会社でも一度使った資料の裏紙にコピーすることがあるのではないでしょうか。消費側から見れば、そういう「リサイクル」は当たり前のことです。

そう考えれば、携帯電話やPCがリサイクルされ、もう一度その中の金属を利用することがあることに思い至ります。「鉛」は機械から回収されて、僕らはそれを2回、3回と繰り返して使っているのです。だからこそ、生産された量の2倍以上が消費されるという現象が起きるのです。

こんなことは、教科書や参考書には書いてありません。与えられた情報をもとにその場で考える「頭の柔らかさ」が求められているのです。

こんな問題もあります。

明治期には、砂糖の消費量が増加した。このような食生活の変容をもたらした要因は何か、答えなさい。【2003年 東大日本史第4問設問B 一部改変】

多くの人は「え? 鎖国が終わって西洋風の文化が入ってきたから、砂糖も多く用いるようになったんでしょ?」と考えると思うのですが、それは「消費側」の話でしかありません。実はそれ以上の理由があるのです。

西洋風の文化が入ってきたからといって、砂糖そのものがなければ食生活が大きく変わることはありません。実は鎖国が終わったことで、海外から砂糖を輸入できるようになったのです。特に砂糖の一大生産地である台湾を領有した1895年(明治28年)以降、砂糖の輸入はますます増えました

このように、「消費側」だけでなく「生産側」の事情も書けていないと、この問題は点数が取れません。こんなふうに、「いろいろな角度から物事を見る」思考を、東大は求めているのです。

そして、これこそが頭が柔らかい人の特徴なのです。逆に1つの見方にこだわって、一方向からのみ見てしまっていると、「頭が硬い人」になってしまいます

何か意見を言ったときに、こちらの側に立って考えてくれないで、自分の立場の主張だけをする人って、頭が硬い人という印象がありますよね。

それに対して、「頭が柔らかい」と言われる人は、「あなたの考えもよくわかります」と相手の立場に立ったうえで、いろいろなことを考えてくれる人のことを言うのではないでしょうか。いろいろな方向から物事を見て、いろいろな立場に立って考えられることこそが、「頭が柔らかい人」の特徴なのです。

「頭を柔らかくする」東大生の習慣

では、このようにいろいろな角度から物事を見られるようになるには、どんなことをすればいいのでしょうか?

東大生にインタビューして見えてきたのは、「あえて自分と反対の立場になってみる」という思考習慣です。

例えば、何かの論題に対して賛成の意見を持っているときに、あえて反対の意見を考えてみます。「社内のオンライン推進」という議題があったときに、あなたが賛成しているのであれば、あえて逆のことを考えて「社内のオンライン推進を反対する人って、どんなことを考えているんだろう?」「どんな理由で、反対しているんだろうか?」と真剣に思考するのです。

これは東大生の中ではポピュラーな勉強法です。東大の入試問題などでも「この意見に賛成か反対か選んで答えなさい」という問題がよく出題されるのですが、その過去問を解くときに、あえて自分の本当の立場とは逆の立場で問題を解く訓練をしていたという学生は非常に多いです。

また、「逆の立場」というのは「賛成・反対」だけではありません。世の中にはいろんな立場の対立があります。急進派と穏健派、右派と左派、大人と子ども、読み手と書き手、生産者と消費者、問題を解く人と出題する人……