世界中に3億5000万以上の登録ユーザーを抱える人気ゲーム「Fortnite」を運営するアメリカのEpic Gamesが、アップルとグーグルを批判するパロディ動画をゲーム内で配信して話題を呼んでいる。
スマホアプリを通じた売り上げは上昇の一途を辿っており、アメリカのボストンのコンサルタント企業・Analysis GroupがアップルのApp Storeを通じて流通する無料・有料アプリを通じた経済活動が5190億ドル(約55兆7728億円)に達すると6月に発表している。
その多くは物販サイトなどでの売り上げだが、デジタルグッズ、コンテンツの売り上げに限るならばゲームは、出会い系や婚活などのマッチングアプリと並んで大きな売り上げを出すジャンルになっている。
ことの発端は8月14日、Epic Gamesが独自の課金システムをスマートフォン向けFortniteに導入したこと。アップルとグーグルはアプリ内課金を利用する際、それぞれの配信マーケットを通じた決済する利用規約を設定しているため、両社はFortniteをマーケットから削除した。
同ゲームはゲーム専用機やパソコン向けを含め多様なハードウェアで遊ぶことができる。アメリカの調査会社のSensor TowerによるとiPhone向けFortniteは今年7月だけで200万が新規にダウンロードされ、3400万ドルの売り上げが計上されていた。
Epic Gamesはこれまで、アップルやグーグルが徴収しているアプリ内課金の手数料が3割に達することに不満の声を挙げてきたが、今回、両アプリ市場から退場させられたことでEpic Gamesは世界中にいるFortniteユーザーを巻き込んだ”闘争”を仕掛けた。
アップルとグーグルが独占するアプリ配信市場における手数料問題は、しばしばその割合が問題となり、独占禁止法に絡んでアメリカ議会において公聴会も開かれている。しかし、さまざまな事情を考慮したとしても、状況はEpic Gamesにとってあまりよいものではない。
ここで”闘争”と表現したのは、Epic Gamesがゲームコミュニティーに対し、プラットフォーム独占によるアップルとグーグルの支配を打ち破ろうと呼びかけているからだ。同社が発表したビデオは、アップルが初代Macintoshを発表した際に使われた、ジョージ・オーウェルの『1984年』を元にしたCMをパロディーにしていからだ。
かつてビッグブラザー(当時のIBM)の支配を打ち破ろうと訴えたアップル自身を、新しいビッグブラザーに見立て、ゲームコミュニティーを裏で牛耳る支配者たちから解放されるため、ユーザーたちに立ち上がることを促している。
この動画を発表するとほぼ同時に、Epic Gamesはアップルが独占的な地位を濫用しているとして司法の場に訴え、またその直後にはグーグルにも同様の訴訟を起こしている。
iPhoneでアプリを配布する手段が、アップルが運営するアプリストアのApp Store以外に用意されておらず、App Storeで3割の手数料を一律に課すのは不当だとの訴えである。同社はグーグルのGoogle Playに関しても、独自のアプリ配布を困難にする規約が多いとして強く批判しており、訴訟対象が広がる可能性もある。
公式ストアのアプリ内課金を迂回する仕組みを組み込めば、即座にアプリが削除されることはEpic Gamesもわかっていたはずだ。アップルを訴える訴状やパロディー動画はあらかじめ用意されていたもので、削除されることをわかったうえで“削除されたイベント”を元にユーザーを巻き込んで世論を味方につけようとしたのだろう。