俳優や歌手、お笑い芸人、ネット上のインフルエンサーなど、さまざまな著名人が毎日のように、SNS「インスタグラム」でライブ配信をしている。新型コロナウイルスの感染拡大による自粛期間中、気になる著名人の配信を視聴したという人も少なくないだろう。
動画投稿プラットフォームとしては世界で数十億人のユーザーを抱えるアメリカ・グーグルの「ユーチューブ」が圧倒的ではあるが、ライブ配信に関してはこのコロナ禍でさまざまなサービスが台頭した。これまで“映える”写真の投稿が多かったインスタグラムも、動画配信が大きく増えた。
ただこれまでインスタグラムでは、ユーチューブのように配信者側が収益を得る仕組みがなかった。そんな中、今年5月末、インスタグラムは初めて収益化の仕組みを実装すると発表。ライブ配信では「バッジ」と呼ばれる投げ銭機能の試験運用を6月からアメリカで始めた。配信中に視聴者がバッジを購入すると、コメント欄の自分の名前の横にバッジが表示されたり、購入者限定の機能を使えるようになったりする。
こちらもアメリカのみだが、インスタグラム上の長尺動画配信サービス「IGTV」でも、動画内に広告を挿入し、投稿者が収入を得られる機能が始まった。
「ユーチューバー」と呼ばれる動画クリエイターが注目を集めるようになったのは、ユーチューブで再生数が伸びれば伸びるほど、広告収入を稼げるという仕組みがあったからだ。インスタグラムにも同様の仕組みが整えば、これまでは企業からのスポンサー収入が主だった「インスタグラマー」の層も広がりそうだ。
個人のクリエイターに限らず、アパレルや外食などの中小店舗が稼げる機能の整備も進む。今春から日本でもインスタグラム上から飲食店の注文や商品券の購入ができるようになった。6月からは「フェイスブックショップ」というショップ作成機能の提供が国内で始まり、店舗の商品一覧や価格を表示し、ECサイトに誘導できるようになった。アメリカではインスタグラム上で支払い情報を保存し、その場で購入できるようになっており、今後日本にも導入される可能性がある。
インスタグラムはこれまで、企業やクリエイターにとって投稿や広告で集客する場所だったが、実際に“稼ぐ”場所に変わりつつある。新機能の狙いや今後の戦略について、インスタグラムのビジネス&メディア部門グローバル責任者を務めるジム・スクワイヤーズ氏に話を聞いた。
――コロナ禍でインスタグラムの使われ方はどのように変わりましたか。
インスタグラムにはもともと、大事にしている人や物の近くにいたいと思っているユーザーが来てくれている。コロナの感染拡大でそれがより重要になったと思う。全体の利用動向にも表れている。例えばライブ配信機能は非常に人気になった。2月と3月を比較すると、閲覧数は70%増加した。
日本では2月下旬に休館を迫られた森美術館が館内のバーチャルツアーを配信したり、アウトドアブランドのスノーピークは「バーチャルたき火トーク」を開催したりしていた。配信を終えた後は、長尺の動画を配信できる「IGTV」にアーカイブ動画を保存し、後からでも見られるようにしている。