――企業だけでなく著名人の配信も多いです。なぜインスタグラムが選ばれるのでしょう。
私が思うに、ファンのコミュニティがどこにあるか、どこでつながりを感じられるかが重要だ。初めに話したとおり、ユーザーは好きなクリエイターとつながりたいと思ってインスタグラムを見に来ている。
とくにミュージシャンであれば、これまでファンとつながれるのはライブツアーだったが、今はそれが難しい。今すぐつながりを作れる場所はどこかを考えると、インスタグラムのライブ配信は自然な選択肢になる。ユーザーにとっては、バックステージやサイン会に来たような気分になれる。
(米有名歌手の)ジョン・レジェンドと妻のクリッシー・テイゲンがピアノの前に座って歌う配信をしていたが、彼らのリビングルームで演奏を聴いているような感覚だ。それに刺激されて、自分でもやってみようという人も増える。それがライブ配信がとても人気になった理由だろう。
――アメリカでは配信者が簡単に収入を得られる仕組みも始まりました。
これまでもクリエイターを支援するためにさまざまな施策を行ってきた。とくにプラットフォームが活性化するよう、クリエイターが収益を得るための支援を強化している。
例えばライブ配信では「バッジ」を開始し、ユーザーがクリエイターを(金銭面で)支援できるようにした。また、IGTVでは動画の中で広告を流すことで(インスタグラム側と)収入を分配できるようにした。
――とくにIGTVについては、2018年の開始当初からユーチューブのような収益化をしないのかという声も少なくなかったように思います。このタイミングで広告の仕組みの導入を決めた理由は。
これまでも検討は進めてきたが、コロナでそれが加速した。クリエイターと事業者ともに、コロナ禍を乗り切るために支援を必要としていた。これはバッジも同様だ。
根本的にはこの数年でIGTVを視聴するユーザー数や、クリエイターや事業者とのユーザーのエンゲージメント(かかわりの深さ)が大きく伸びたことが理由だ。インスタグラムで長時間の動画を見るという体験は新しかったが、着実に理解が進んだ。
フォローしているクリエイターがIGTVの動画を投稿すると、タイムラインにプレビューが表示される。これをタップすると本編に飛ぶようになる。そうした仕組みがその動画やIGTVの利用を促す起爆剤となった。
――動画を配信するクリエイターだけでなく、最近はインスタグラムに登録する飲食店などの中小業者が収益を伸ばすための機能強化も目立ちます。
スモールビジネスの支援もクリエイターなどと同様に大きな注力領域だ。飲食店向けには、4月に(「Uber Eats」などの提携サービスから)料理を注文する機能を、5月からは(割引で食事を購入できる権利などの)ギフトカードを買える機能をリリースした。
やはりコロナの感染拡大を受け、機能を実現するために必要なサービスとの提携に向け世界各国で素早く動いた。注文機能は、4月の開始当初は国内パートナーがウーバー1社だったが、5月には4社が加わった。小規模店舗をなるべく多くカバーしていくために、適切なパートナーとの提携をなるべく早く増やしていく。