あのワークマンがコロナ禍でつかんだ自信

靴は作業靴だと100種類以上、一般向けだとおよそ30種類を展開しており、毎年売り上げが2倍の伸びを見せている。最近話題になったナイキの厚底シューズのような高反発機能を持つスニーカーを1900円で売り出したら、大人気商品になった。

ワークマンの店舗は従来、100坪程度の広さだったので、それぞれの商品に十分な売り場面積を割けなかった。だから作業着と靴、作業着と女性商品、作業着とスポーツウェアと、フォーマットを変えて出店していけないかと構想している。

店舗数は1000店舗を目指す予定だったのを(現状約870店舗)、新しいフォーマットを作れば2000店舗までいけるのではと思っている。

モールからの出店依頼が急増

――ワークマンはリアル店舗のうち9割超が路面店です。今後も路面店中心の出店になるのでしょうか?

既存の店舗は今、来店客が増えて駐車場がいっぱいになっているので、「店舗の広さが100坪」+「10台分のスペースがある駐車場」という従来のフォーマットから、「120坪で20台」、あるいは「150坪で50台」と店舗フォーマットの拡張を検討している。

大型店化、大型駐車場化を進めていき、あとはショッピングモール・SCで条件が折り合うところにどんどん出ていくつもりだ。モールで路面店と同じような採算が確保できるのならば、積極的に出ようと考えている。

路面店の売り上げに対する家賃負担率は、償却費などを含めて3%が目標。うちは粗利益率が35%で、そのうち4割を加盟店に配分するから、その分、固定費を低く抑えることが重要になる。

だから、モールも売り上げに対して3%の家賃という条件に合えば出る。

――そんな好条件、モールで可能ですか?

それが、ありうるんですよ。

確かに普通のアパレルだと、家賃は売り上げの10%近くかかるテナントも多い。だからこちらが「3%を切る家賃で」と条件を出すと、今まではモール側もあきれて話を持ってこなかった。ところがコロナの後、声がかかるようになった。

今、モールからのオファーがすごいんですよ。それで昨日と今日は5カ所くらいモールを見てきた。やはり(コロナの影響もあり)テナントが撤退して売り場が空くと困るのだろう。

――しかし、3密を回避する向きもあり、モール自体の集客力の低下も懸念されます。モールへの出店はリスクになりませんか。

うちは全部自分たちの力で集客するから、モールの集客力は必要ない。何を買うか決めてモールに来る人は減っているけど、ワークマンに来る人はほとんどが目的買い。

「ららぽーと立川立飛」(東京都立川市)にワークマンプラスの1号店を出店したときも、うちの店でららぽーとのカードを使った人はすごく少なかった。これまでららぽーとに来なかったお客さんをうちが引き込んだ、と見ている。

ワークマンの路面店は店が汚れているところもあるけれど、モールはきれいですよね。モールに出るのは売り上げなんかよりも、「きれいな店をお客さんに見せたい」という目的が大きい。

路面店から一般客を吸い上げたい

――広告塔のような役割ですね。

それを路面店と同じ採算でやる。(モールの店舗はフランチャイズではなく)直営店になるけど、当社にモールの店舗の運営ノウハウは(社内に蓄積する)必要はないから、委託会社に任せる。

あと、モールに出ることで路面店から一般客を吸い上げたい。路面店では、プロ客の駐車は10分ぐらいだが、一般客は(滞在時間が長くて)30分駐車する。そうすると駐車場が混んでしまい、プロ客が逃げてしまうこともあった。そうならないために、一般客を路面店から吸い上げる目的もモール出店にはある。

――現在、モールへの出店は10店程度ですが、例えばモール店が店舗全体の半分くらいになるまで増やすのですか?

そこまでやったら危険。今回みたいなこと(外的要因で休業や大幅な客数減を余儀なくされること)になる可能性もある。せいぜい全体の10%までとか、そういう制限は付けようと思う。

「週刊東洋経済プラス」のインタビューでは、「コロナ前後で変わった仕事のやり方」「ネット通販に対する考え」「コロナ後の商品戦略や課題」「ユニクロとワークマン」の違いについても詳細に語っている。