――コロナ禍でもワークマンの既存店売上高は絶好調です。これは、予想通りなのでしょうか。
いやいや、想定外ですね。
4月は「開店休業」状態になってもよいくらいに思っていた。全店舗のうち8割の店が時短営業か臨時休業(土日のみ休業など)を実施したので、特に5月の既存店売上高が前年同月比で120%を超えたのは驚きだった。
自動車産業が盛んな愛知や静岡の店舗では、作業系商品の売り上げが落ちた。工場が止まるとプロ客は作業服を買わなくなるから、如実に店舗の数字として出る。その落ち込みを一般客向けの増加で補った形だった。
一般客が伸びたのはすべて「自社の力」と言えればよいが、ショッピングセンター(SC)が一時休業した影響が大きい。ユニクロなどの店舗も一時閉まっていたので、「じゃあ、ワークマンでいいや」といって、うちの路面店に顧客が流れてきた。
――緊急事態宣言は解除されましたが、国内経済はどう回復していくとみていますか。
V字回復はまず無理だろう。内需は財政出動の規模が足りないし、政府の対応も遅いので、消費マインドがどうしても冷えてしまう。ワークマンでも購買単価が低くなるなど、足元ですでにバリュー志向が表れている。
ただ、企業にとっては、経済動向よりもライフスタイルの変化のほうが大きなインパクトになってくるだろう。
人が密集する場所にあまり行かず、リモートワークも定着すると、「ハレの日のための服よりは普段着でよい」という風潮が強まる。となると、これまでの都心部を中心としたいわゆるアーバンライフから、どちらかというと「森の中に住みたい」というような郊外型、田舎暮らしを志向するスタイルが重要視されてくるのではないか。
――外出自粛ムードが高まった3月、ワークマンでもアウトドア用品がよく売れたと聞きました。
それが意外にも、緊急事態宣言明けの5月後半以降に売れたのは、アウトドア用品ではなくてスポーツウェアだった。スポーツ志向が非常に強くなっている。
――確かに、ジョギングや散歩などで着用する衣類の需要が高まっているように見えます。
当社では「ワークマン○○」という新業態を構想中だったが、今はその中でも「ワークマンスポーツ」を優先すべきかなと思っている。レギンス、短パン、Tシャツといった商品は、すでに山ほどあるから。あと考えているのは「ワークマンレディース」や「ワークマンシューズ」あたりだ。