「何だ、簡単じゃないか!」
と思われるかもしれませんが、意外と、この簡単なことをしている人は少ないのが現状です。ただし、段取りを決めるためには、このスケジュール表だけでは不十分です。実際の仕事は、現場での具体的な作業となりますから、誰が何をするかがわかる作業レベルまで分解しなければ、適切な進捗管理はできません。
“新商品紹介”という仕事の1つである“撮影”という仕事を作業レベルに落とし込むと以下のようになります。
続いて、各作業に関わる人を決めていきます。例えば、2番の“上司や関係者にラフを確認する”という作業には、上司や関係者、山田さん、フォトスタジオが関わります。
そして、これらの作業をスケジュール表に落とし込むと、誰がいつまでに何をすべきかが、具体的にわかるようになります。
「少し面倒だな」
と感じますか? ベテランの方などは、自分の頭の中で、このようなスケジュールを組むことができるかもしれませんが、経験の浅い人には、まったく伝わりません。仕事仲間に、こうした具体的な作業がわかるスケジュールを共有しておかないと、テレワークではもちろん、職場においてもスムーズに仕事を進めることはできません。
また、自宅で育児をする山田さんは、会議に出席する、買い出しに行く、フォトスタジオに撮影の立ち合いにいくなど、外出する際には、家族や親戚に子どもの世話を依頼しなければなりませんから、事前にスケジュールを明確にしておくことは不可欠です。
離れて仕事をするテレワークでは、リスクが発生した場合の対処が難しくなります。とくに山田さんのように育児をしている方には、大きな影響を及ぼします。
ここで、“撮影”という仕事のスケジュール表の2週目の月曜日に開催される会議に注目してください。この会議は、撮影用のラフを上司や関係者が集まって評価する場です。山田さんは、新商品であるフライパンのウリが、“誰でも簡単に持つことができる軽いフライパン”であるため、女性が軽そうに持っている写真を撮ろうと考えて、撮影イメージのラフを描いたとします。
しかし、会議の場で、開発部の先輩社員が、「私たちは、おいしく調理できることにこだわった」と主張し、撮影では“軽さ”を強調するべきか“おいしさ”を強調するかで会議がまとまらなかったとします。
そうすると、撮影イメージを決めることができず、“フォトスタジオとの打合せ”“買い出し”などのスケジュールを延期せざるをえなくなります。そうなると、山田さんは、再び、家族や親戚に子どもを預けるための調整をしなければなりません。
山田さんがテレワーカーでなければ、会議を夜まで延長する、それでも決まらなければ翌日も会議をする、そして、火曜日と水曜日に山田さんが残業して乗り切り、木曜日のフォトスタジオでの打ち合わせに間に合わせるということもできるかもしれません。
しかし、これではワークライフバランスを保つことができません。また、山田さんがすでに“新商品紹介”のメインコピーの方向性を決め、デザイン会社とデザインについて話を進めていたとすると、変更はデザインにまで影響し、場合によっては、ホームページ全体のスケジュールが遅れるリスクにもつながります。
こうしたことを防ぐために、山田さんは、撮影用のラフを1週目の木曜日の午前中までに上司に送り、上司は午後一番にチェックし、開発部の関係者と事前に共有することが必要です。その段階で、“軽さ”なのか“おいしさ”なのかの議論ができれば、山田さんは第1週の金曜日に、開発部の先輩社員の意向を取り入れたラフを作成することができます。
“軽さ”に加えて“おいしさ”も伝わるような修正案を準備し、第2週の月曜日の会議に参加すれば、開発部の先輩社員も納得し、その後のスケジュールを変更することなく“撮影”を行うことができます。また、デザインの変更も最小限にとどめることができます。