最初のうちは、一音一音をはっきり、丁寧に発音するよう心がけることが大切。「ありがとうございました」ならば、
と、最後の「た」の音まで気を抜かず、しっかり発音するということだ。なお、このときは句点(。)まで感じる気持ちで発音するとなおよいそうだ。スピードに関しては、多少ゆっくりになったとしても問題はないという。
しかし、こうした配慮がなぜ必要なのか? 魚住氏によれば、理由は明確。1音1音、はっきり丁寧な音にして気持ちを込めれば、相手に伝わる力が倍増するからだ。また、1音1音を確認しながら大事に読めば、早口になってしまうのを防ぐことも可能。
緊張していたり焦っていたりすると、読んでいるうちについ早口になってしまうものだ。経験のある方もいらっしゃるのではないだろうか? しかし早口で読み上げてしまうと、内容が上滑りしてしまうため、どうしても相手には伝わりにくくなる。
だからこそ、しっかり発音することが大切。速さに関しては「これではスローすぎるのでは?」と感じるくらいでちょうどいいのだという。
通常、文章には「読点(、)」がついている。しかし音に出して読む場合には、必ずしも読点どおりにしないほうがいい場合もある。簡単なことで、読点が出てくるたびに息継ぎをして間をあけてしまうと、文章が間延びして相手に伝わりにくくなるのだ。
そのケースごとにどうするべきか判断する必要があるわけだが、いずれにしてもそういう場合は、読点で文章を区切っても息継ぎせず、そのまま次のセンテンスへ入ればいい。
ほんのちょっとの間ではあるが、そのような細かい配慮が「聞きやすさ」「聞きにくさ」を左右するということだ。
「ここぞ」という重要なタイミングでは、あえて息継ぎをせずに「ワンブレス」で読み上げるのがいい。そうすれば「粘りが出る」「迫力のある」話し方や読み方ができるからだ。
これはプロのスキルであり、プロの歌手も使っているもの。サビの部分などをワンブレスで歌い上げれば、大きく盛り上げることができるわけだ。
そのため、ここぞというときのワンブレスができるように、朗読の基本である「腹式呼吸」トレーニングをしっかり行うべきだと魚住氏は主張している。
朗読をする際、体を安定させることは非常に重要。視覚からの情報は、受け取る側の感情と連動してくるため(ノンバーバル・コミュニケーション)、ゆらゆらと体を動かしながら話すと「自信がないのかな?」などと聞き手を不安にさせてしまうからだ。
もちろん手のジェスチャーや、体の向きを左右前後の観客全員に伝えるために動かす場合などは、自然な動きであるためこれにはあたらない。だがそれ以外は、基本的には体を安定させ、動かさないことが大切だというのだ。
なお、これにも呼吸が関係してくるという。