源泉徴収はいったい何が「徴収」されているのか

お金の基本について改めて学んでみませんか?(写真:artswai/PIXTA)
すみません、金利ってなんですか?』の著者で元国税専門官の小林義崇氏が、何年経っても意外と知らない「給料から引かれるお金」の基礎について解説します。

給料をもらうと同時に「住民税」や「所得税」といった税金や社会保険料が引かれますが、その仕組みを正しく理解している人はどれくらいいるでしょうか? 経理から説明があるとしても「初任給をもらうときの1回だけ」となると、その1回で理解するのは意外と難しいもの。

なかでも、「源泉徴収」は、必ず聞くのに意外と意味を知らない代表的な用語ではないでしょうか。

「源泉徴収」とは何か?

源泉徴収という言葉を知らなくても、「徴収」とつくくらいなので何かが取られている、という感覚はあるかもしれません。

これは厳密には「会社などの組織が税務署の代わりに、従業員にかかる税金をあらかじめ毎月引いておく」こと。ここでいう源泉とは「お金が発生するところ」という意味で、つまり「税金が発生するタイミングで引いておきますよ」という意味になります。

従業員に毎月会社から支払われる給料は、「所得税」の対象となります。

しかし、全国の会社員が納税のための手続きを自分でするとなると、手間も時間もとてつもなくかかります。そのため、総務や経理の担当者が、毎月、当事者に代わって税金を納めてくれている、これが「源泉徴収」の背景です。

給料から引かれる税金と社会保険料

給料から引かれるのは所得税だけではありません。まずは税金については、先ほどの「所得税」のほかに、前年の所得から計算して算出される「住民税」も引かれます。住民税に関しては、社会人2年目以降に天引きが開始され、納め先が地方自治体になり、「特別徴収」と呼ばれます(実態は、源泉徴収と同じ)。

続いて社会保険料として、「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金」「雇用保険料」などが引かれます(介護保険は40歳から)。

税務署や地方自治体の職員も、全国の会社員が納税や支払いのために窓口に押し寄せたら、とても対応できません。そこで法律を作って、国に代わって会社に税金や社会保険料を先に徴収してもらっています。

源泉徴収や特別徴収は、給料や報酬を支払う側、会社勤めの人であれば給料を支払う会社側に行う義務があります。

とはいえ、毎月の源泉徴収は、実は本来支払うべき税額よりも多めに引かれていることがよくあります。これは、「過少払い」をなくすため。

本来の税金より少なめに支払っていた場合、追加の支払い手続きが発生するなど、課税する側・税金を支払う側双方に手間がかかります。そこで、確実に「払うべき税金」を確保するために、多めに源泉徴収するようになっているのです。

もちろん、多めに支払った分は返金されます。毎年末、自分がいくら税金を支払うべきかを計算して税額を確定し、それを申告することで差額分を割り出して返金等の手続きを行うのが「年末調整」です。

毎年11月末ごろになると、経理から年末調整に関する書類を配られるので、そこに必要事項を記入することで、その年の税額を確定させることになります。ここでポイントになるのが、その人が支払うべき税金がどう決まるか、という点にあります。

所得税や住民税は、給料の金額だけで決まりません。「所得控除」も税額に影響するので、年末調整で所得控除を計算し、税額を再計算する必要があるのです。

ここで押さえておきたいのが、「所得」「給与所得控除」「所得控除」の3つのワードです。

「所得」というのは、収入から必要経費を引いた金額のこと。ざっくり、商売をしている人が年間500万円を売り上げて必要経費が100万円かかった場合、差引400万円が所得、となります。