「10年後に稼げない人」と稼げる人の決定的な差

その他、看護師・介護福祉士・保育士など、人間にしかできない“対人感情ボディワーク”に手堅いニーズがある医療福祉系、あるいは“対人ラストワンマイルワーク”である外勤営業職がこのエリアに収まる。

警察・消防・自衛隊など現業系の公務員も一定数が存在しており、国家が存在する以上は必要不可欠。このエリアの職種にはAIが入り込む余地がほとんどないため報酬水準は「中位安定」となり、コミッション制の営業職(車・家・保険)など、成果に応じて高収入が期待できる仕事も残るという。

ITに極度のアレルギーがあり、なるべくテクノロジーに関わらないで生きていきたい人は、このエリアこそ「逃げ場」としてお勧めである。その場合、日本国内市場全体は確実に縮小していく一方なので、民間で生き抜く場合は、グローバル化、すなわち外国人マーケットを考慮しない限り、少しずつ食えなくなっていく。10代20代の若者なら、日本人市場のみをターゲットにしたら苦しい。
成長市場は、2042年まで人数の増加が見込まれる「国内の高齢者(65歳以上人口)と、「外国人(国内ならインバウンド需要)」の2つだけなので、それらをターゲットにすれば追い風がある。(287~288ページより)

例えば、外国人旅行者向けの旅館や和食店で、スタッフや料理人として中国語や英語の日常会話ができれば、伸びしろは大きくなる。したがって、欧州で和食店を開くなど、日本人は国外市場での仕事をもっと考えるべきだと渡邉氏は主張している。

上を目指すなら「デジタル・ケンタウロス化」

「デジタル・ケンタウロス」の職業は、もともとスキル難易度が高い分、平均的な報酬水準も高めだ。だが、デジタル(下半身の馬)を活用しないと徐々に下振れし、アート(上半身の人間頭脳)の部分で大きく稼ぎが上振れする。早い段階で、才能や向き不向きの見極めを行い、その分野で食べていくという覚悟が必要となる。(288ページより)

このエリアは、2つの職業領域によって成り立っている。まず1つが、グローバル化によって「無国籍ジャングル」(国籍無関係の成果主義世界)の厳しい競争となる「攻め」の職業。建築家、デザイナー、アーティスト、ファンドマネジャーなどがそれにあたるわけだ。

一方は、日本語障壁や日本文化によって高いハードルがあるため外国人との競争を避けることができる、国内向け「守り」の職業である「グローカル」。記者、編集者、弁護士、医師、人事などがその領域に入ることになる。

なお、まったくの白紙でなにをやりたいのかわからないという学生に対しては、「とりあえずITエンジニアを目指して勉強するのが賢明だ」と渡邉氏はアドバイスしている。つまり、そこから軌道修正していけばいいという考え方だ。

なぜならプログラマーから営業や経営方面へキャリアチェンジすることは容易だが、その逆は難しいからである。そのため、AI化とグローバル化がますます進む状況下、プログラミングと語学を20代までに鍛えておけば30代のキャリアは明るくなる。

なかでも、左側のエリアを駆逐して生産性を高めていくAIに詳しいエンジニア職は、今後数十年にわたってグローバルで売り手市場を維持する、“最強の勝ち組職業”となる。そこそこの動機(やりたいこと)と能力(できること、向き不向き)の合致は必要であるが、ほぼ全業界において応用範囲が広い、やりがいある仕事といえる。(289ページより)

駆逐される側の仕事が消えて賃金が下がり、駆逐する側の仕事が増えて賃金が上がるのは世の常。そうでなくとも、日本は超高齢化と低成長&低賃金で追い詰められている。ゆえに産業構造を高付加価値なものにモデルチェンジしていくしか選択肢がないわけだ。