新型コロナウイルスへの対応で、テレワークや在宅勤務を導入する企業が増えています。特に3月25日夜に小池都知事が緊急会見を行い、都民に対し不要不急の外出を控えるだけでなく、平日も仕事はできるだけ自宅で行うように要請したことから、企業は一層の対応を迫られています。
多くの企業にとって、今のところテレワークや在宅勤務は、新型コロナウイルスという危機に対応する緊急避難措置でしょう。ただ近年、世界的にフリーランサーやテレワーク・在宅勤務を利用する会社員が増えており、日本でも場所・時間に縛られない柔軟な働き方が普及する可能性があります。
今回は、テレワーク・在宅勤務といった働き方に企業がどう向き合うべきかを考えてみましょう。
下で紹介するのは、ある素材メーカーT社の商品企画グループのこれまでの職場管理(Before)と、テレワーク・在宅勤務への対応(After)です。
この職場は総勢12名、マネジャー1名、リーダー3名、メンバー8名で構成されています。2年前にテレワーク・在宅勤務を導入し、昨年までは限られた利用でしたが、今年2月下旬からはリーダー・メンバーが半分ずつ交替で出社しています。
この中で、?指示・報告、?勤怠管理、?懇親については、適切なシステムを導入し、社員がそれに慣れれば、多少の不便はあっても、大きな問題はないでしょう。一方、厄介なのが、?業務分担、?評価、?教育です。
まず?業務分担。日本ではT社のように、各社員が担当する業務を明確にせず、「皆で力を合わせて頑張ろう」とチームワークで取り組みます。この曖昧な業務分担は、個人で業務に取り組むテレワーク・在宅勤務とは、相性最悪です。
?評価とそれに伴う報酬の決定にも困難がつきまといます。日本の大手企業の9割が職能資格制度を導入しており、従業員の能力を評価し、報酬を決定します(能力を評価するのは難しいので、勤続年数とともに能力が高まるという前提で年功序列にしている企業が多い)。
仕事の過程が見えにくいテレワーク・在宅勤務では、従業員の能力を評価するのが難しく、やはり職能給とは相性がよくありません。
?教育も同様です。多くの日本企業の教育は「OJT一本足打法」で、職場で先輩社員が後輩、特に新人に手取り足取り実務を指導します。時間・場所を共有できないテレワーク・在宅勤務でOJTを実行するのは、かなり困難です。