筆者:ロックダウン中のニューヨークでは、生活に不可欠なグローサリーストア(日本のスーパーマーケットに当たる)、医療機関、郵便局などの事業以外は閉鎖しています。レストランはテイクアウトとデリバリーのみ。散歩や自然の中での運動は許されていますが、緊急以外で別居中の家族や友人を尋ねることも禁止。他人から6フィート(約1.8m)の距離を保つこととされていますね。
エリサさん(大学職員。家族はホテル勤務の夫と13歳の娘): 3月15日はセントパトリックのお祭りもあり、若者はそこら中で大騒ぎでしたよね。こうした事態もあり、その後のロックダウンにも繋がったわけですが、展開があまりにも早く、必需品の買い揃えなど準備が慌ただしかったです。
外食店はレストラン営業が禁止されてから、近所ではテイクアウト営業に切り替えた店もありますが、採算が合わないのか、だんだん営業時間が短くなったり、閉店してしまったり。グローサリーストアには、ハンドサニタイザー(消毒剤)以外はなんでも揃っています。違うのは、店内の客数制限のために、6フィート間隔に並んで入店を待つぐらいでしょうか。先週、夫とジョギングをしていたら、公園に人があふれていて、「自粛の意味がないよね」と引き返しました。人による温度差を感じます。
ユミさん(学生、コミュニティ・カレッジでビジネスを勉強中):アジア人の多い地域なので、差別はないと思っていましたが、先日マスクをしてスーパーに向かっていたら、窓から「チナ、カブロン」と叫ばれました。スペイン語で「中国(人)クソ野郎」といった意味です。ショックよりも、「本当に、こうして差別してくる人がいるんだな」と。
ナツヨさん(プロスピーカー・戦略コンサルタント。夫は歯科医師で娘は8歳):私は9.11(2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件)のときもニューヨークにいました。あのときは、ネガティブなできごとをきっかけに、「みんなで乗り越えよう」というポジティブなエネルギーが生まれて、ニューヨークの底力を感じました。でも今回は、人の汚い部分が露呈していると感じます。それだけ、みんな精神的に参っているということでしょうか。
筆者:ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は「必要不可欠な業種を除く事業体は、可能な限り在宅勤務にすること」「州民は可能な限り自宅待機を行い、不要不急な公共交通機関の使用を控えること」等の要請を出しています。
エリサさん(大学職員):私は今年2月からニューヨーク州立大学に職員として勤めています。ちょうど、大統領選挙の話題が盛んな頃でしたが、3月に入ると急に話題は新型コロナウイルスで持ちきりになりました。
「学内に感染者が出た」とデマが回り、学長が学生・職員へのメールで「事実ではない」と否定する騒動もありました。3月15日に「翌16日からニューヨークの市立校は休校」と決まり、私が働く大学でも、学生は自宅待機となりました。16日は職員だけ出勤するよう言われたのですが、有給休暇を取って自主的に休んだ人が多く、出勤した職員は半分以下。翌日からは、職員もリモートワークに切り替わっています。