ニューヨーク「コロナ禍」直撃した都市のリアル

筆者:病床と人工呼吸器の不足が深刻になっています。ニューヨーカーの憩いの場だったセントラルパークでは、3月29日に仮設病院の建設が始まり、68床のベッドが提供されます。30日には、1000床のベッドと12の手術室を備えたアメリカ海軍の病院船「コンフォート」がマンハッタンに到着しました。

エリサさん(大学職員):私もすでに感染している可能性もありますし、今後も感染は免れないと思います。怖いのは発病しても受け入れてくれる病院がないこと。自宅から最も近いのは、コロナ患者を多数受け入れ、パンク状態だと報道されているエルムハースト病院です。セントラルパークにもテントの病院ができるそうですが、近所のほかの病院でも車道を閉鎖してテントを立てていました。まだ寒いニューヨークで、テントで隔離されるなんて……。ニュースを見るたびに、病院のお世話にならないよう、よく寝て、よく食べて、家にこもるのがいちばんだと思っています。

ナオミさん(国際人材育成会社代表):アメリカ人の夫が1月中旬から風邪をこじらせ、2月半ばに病院に行きました。診察した主治医はコロナを疑ったのですが、アメリカでは感染者がゼロだった時期で、中国への渡航歴もないため、検査対象外でした。3月に入っても回復しないため、「検査をしたい」と言い続け、ニューヨークで検査が始まった3月中旬、やっと検査を受けられました。幸い陰性判定でしたが、「肺炎の可能性があるからレントゲン検査を受けたほうがいい」と言われ、いくつかの病院にアポイントの電話をかけましたが、「陽性の可能性があるからダメ」「救急車で到着する呼吸困難の患者を優先する」という理由で、診察拒否されました。夫は自宅で2週間静養して回復しましたが、「今は医療が受けられない」という噂が現実のものだと知り、本当に不安な時期を過ごしました。

病院にはかかっていないが異様な倦怠感を経験

ミギワさん(ピアニスト、コンポーザー、プロデューサー):実は、私も一時、具合が悪くなりました。「コロナの症状が多様になってきている」と言われ始めたころです。熱も咳もありませんでしたが、今まで体験したことのない異様な倦怠感に襲われました。危ないと感じたときは夕方5時すぎで、ホームドクターのオフィスはクローズ。「ERには、人工呼吸器が必要な状態になるまで行くな」というのは、今やニューヨークの常識ですが、立つことも座ることもできない状態で、どうしたらよいのか途方にくれました。

幸い、知人の日本人医師が、アプリを使ったビデオ診断サービスを紹介してくださったのですが、あまりにもフラフラで、アプリのダウンロードや設定すらできない、文字も打てない状態でした。今は回復し、あれがコロナの症状だったのかは不明ですが、「とにかく元気なうちに、体調が悪くなったときの連絡先や、やるべきことをリスト化する」「異変を感じたら、ベッドのそばにタオル、体温計、水、咳止め、解熱鎮痛剤(ニューヨークの医師は、アセトアミノフェンを有効成分とするものを薦めています)を用意しておく」「1人暮らしなら、近くの友人知人の連絡先を確認しておく」など、備えておくことを強くお勧めします。

筆者:この10日間ほとんど家から出られない状況で、ストレスを感じませんか。

エリサさん(大学職員):趣味に没頭できるかなと、ワクワクする気持ちもありましたが、実際はリモートワークをしながら、家族の食事の世話などに追われて、いつも以上に忙しいです。でも、この機会に家事分担を決めたら、娘が率先してご飯を作ってくれるようになり嬉しいです。

ユミさん(学生):近くに日本食材店やグローサリーストアが複数あるので、食材にも困らず3食手作りの料理を食べて、ヨガをしたり、本を読んだり、健康的に暮らしています。コロナをきっかけに、今まで連絡をしてなかった人や日本にいる家族とも頻繁に連絡を取るようになりました。