新型コロナウイルスの感染拡大を受け、たくさんの人が集まることを自粛する動きが相次いでいます。政府が大規模なスポーツや文化イベントなどについて、中止か延期、または規模を縮小するよう要請するオフィシャル見解を示したこと、大物ミュージシャンのコンサート中止の報が飛び交い、大きなスポーツイベントも無観客で開催される異常事態です。
そんな中、これからピークを迎えていく2021就活戦線にも大きな影響が出ています。例年2月後半から3月にかけては、翌春新卒向けの大規模な合同企業説明会が開催され就活が本格化するシーズン。これらの就活イベントはほぼすべて、企業が個別に主催する会社説明会も続々と中止が決定されています。
そんな状況の下で、急速に企業の間で広まっているのがオンライン(=Web)を活用した採用です。HRテックといわれるサービスの一角として、昨今台頭してきたオンラインでの説明会やWeb面接などに切り替える企業が急増しているのです。
Web面接とは、Skypeなどのインターネットを介して行われる面接全般のことを指します。Webカメラを通してリアルタイムに行われるライブ式と、撮影した動画を専用のプラットフォームに投稿する動画投稿形式の2つがあり、各企業が自社の採用戦略に合わせて使い分けています。
今後の選考プロセスは不透明感でいっぱいです。感染拡大のリスクが高い行為として、「対面での人と人との距離が近い」「会話などが一定時間以上続く環境」などが挙げられていますから、「対面での採用面接」は危険度が高いシチュエーションに当てはまりそうです。
そうなると選考過程を後ろ倒しするというのが現実的な選択肢となるわけですが、これも実は容易ではありません。今年度は東京オリンピック開催年。開催自体に暗雲も垂れ込めてはいますが、だからといって就活のスケジュールがオリンピック時期に被ってくるのは、やはりリスキーです。
とはいえ、Web面接という「非対面」での選考に難色を示す企業もいまだ少なくありません。とくに商社や飲食・小売りといった業界では、採用面接のオンライン化には消極的です。私が所属するツナグ働き方研究所の取材でも「やっぱり実際に会ってみないと人物の見極めができないのでは?」と話す採用担当者のほうが大半でした。
就活面接とは、言ってみればいい人材を選び抜きたい企業と、選ばれるために少しでもよく見せたい学生との真剣勝負の場です。その戦場が、いきなり対面から非対面のオンライン空間に移ることに、不安を隠せないのでしょう。
おおむね、面接という「勝負」には2つの段階があります。1つ目は学生が本来の実力を発揮できるような環境づくり。自分のチカラを出し切るのが学生にとって死活問題なのは言うまでもありませんが、実のある選考をしたい企業側にとっても重要です。だから面接官は学生に寄り添いながらリラックスできる場をつくろうとします。そういった意味で、環境づくりは勝負の前の共同作業の段階とも言えます。
2つ目が、いわゆる真剣勝負の段階です。できるだけ盛りたい学生と、その盛りを冷静に看破して素の実力を見極めたい面接官の掛け合いが繰り広げられる「いたちごっこ」ともいえます。非対面であることを懸念する企業は、ここでの勝負勘が鈍ることを危惧しているのです。
Web面接を経験した学生からは、肯定的な意見が多数聞かれます。取材した学生A君も、「リアルな面接の場だとガチガチに緊張してしまうけど、オンラインの動画だとあまり硬くならずにすんだ。ちゃんと自分を出せて納得のいく面接ができました」と話してくれました。リアルな臨場感がないぶん、逆に緊張というハードルを下げてくれるのです。