「自己肯定感」がブームです。書店に行くと自己肯定感に関するコーナーがあり、10冊以上の本が並びます。あるいは、ネットでも「自己肯定感を高める方法」という記事をよくみかけます。
自己肯定感には非常に難しい問題があります。自己肯定感の定義が、研究者ごとに微妙に異なるし、自己肯定感を高める方法も本によってかなり違います。
あるいは、アドラー心理学を紹介した200万部超えのベストセラー『嫌われる勇気』には「自己肯定ではなく、自己受容」。つまり、自己受容こそが重要あり、自己肯定は重要ではない、とまで書かれています。また、「自己肯定感を高める方法を実行してみたが効果がない」という人も多いはず。
加熱する自己肯定感ブームの中で錯綜する「自己肯定感」とそれをめぐる問題について、今回わかりやすくまとめるとともに、「自己肯定感を高める」ための前段階で必要なことをお伝えします。
自己肯定感とは何でしょう? 心理学事典に載っている定義を引用すると、「自分の可能性を信じ、自分はできるんだという自信をもち、肯定的に自己を認識すること」とあります。
自己肯定感は「高い」「低い」で表現されますが、そもそも「自己肯定感が低い」というよりも、「自分はダメな人間で、自分をまったく肯定できない」という人も多いはず。それは、「自己肯定感が低い」というよりも「自己否定感」です。
「自己肯定感」の反対が「自己否定感」。自己否定感を理解すると、理解しづらい自己肯定感も腑に落ちます。
「どうせ私なんか」「自分には無理」「自分は生きる価値のない人間」「生きていてもしょうがないので死にたい」というのが、自己否定感です。
その逆、「自分にはできる」「自分は生きる価値がある」「毎日が楽しい」というのが、自己肯定感です。自己肯定感が高いか低いかではなく、まず「自己肯定感」か「自己否定感」の2つのベクトルで考えると、あなたが「どちら寄り」の人間か、よくわかるはずです。
自己否定感の強い人は、人から褒められても、励まされても、「どうせ本心じゃないし」とか「無理して言っているに違いない」とマイナスに受け取ってしまいがちです。
仕事で成功しても「たまたまうまくいっただけ」くらいにしか思わない。すべての体験に「マイナス」を掛け算している状態です。他者から承認されても、成功体験を積み上げても、まったく積み上がらない。ポジティブな言葉を口に出す「アファーメーション」を実践しても、効果が出るはずがありません。
自己否定感の強い人は、どれだけ「自己肯定」を重ねても、結果は「マイナス」となる。それが、自己肯定感が高まらない理由です。
なのでまずは、自己否定感をリセットして、「ゼロ」にする必要があります。その方法が「自己受容」です。
「自己受容」とは、できない自分をありのままに受け入れること。コンプレックスや欠点、短所を抱える自分、失敗だらけの自分、ネガティブの自分を、そのまま肯定し、受け入れることです。「今のままの自分でいい」「今のまま生きていい」、その感覚が「自己受容」です。
普通の人にとっては当たり前の感覚でしょうが、子どもの頃、親から否定されたり、虐待された経験を持つ人は、「自分は生きていてはいけない存在」と思い込んでしまいます。
「自己受容」できると、「自己肯定」の世界に足を踏み入れることができる。自己肯定感を高める方法としては、「自己承認」(自分で自分を承認する)、「他者承認」(他者から承認される)、「成功体験」(成功体験を積み上げる)などの方法があり、それらの体験によって、階段を上るように自己肯定感が高まっていくとイメージするとわかりやすいでしょう。