「最近の若者は本を読まない」
そう言われて久しく経ちます。よく「出版不況」と言われますが、僕が若者だった30年くらい前から、そう言われていたような記憶があります。
出版不況は、もうずっと続いています。本が売れない時代になっているのは間違いありません。
書店はどんどん減っていき、雑誌は次々と廃刊や休刊に追い込まれています。本を取り巻く未来は明るくありません。僕は読書が大好きなので、そんな話を聞くと、いずれ紙の本がなくなってしまうのではないかと心配になってしまいます。
でも、なぜ若い人は読書しないのでしょうか? 先日、なぜ若い人は本を読まないか、若手起業家のAさんに聞いてみました。Aさんは、主に若い人に人気のユーチューバーや、ネットライブ配信をするライバーといわれる、インターネット動画界隈で活躍する20代半ばの起業家です。やり手ですし、実際に話していても、とても頭がよい人だということがわかります。
でも、本はほとんど読まないそうです。なぜAさんは読書しないのでしょうか? あるとき、とても気になって、僕は質問してみたのです。
「あなたや、ネット世代と言われる若い人は、なぜ本を読まないのですか?」
すると、聡明なAさんは、自分や若い人が「なぜ本を読まないのか?」という理由について分析してくれました。
Aさんが言う「読書しない人が本を読まない理由」は5つありました。
まず、読書が「つらい」ということ。Aさんは「もし楽しいんだったら、そりゃ自分だって本を読みます」と言っていました。
「でも、活字を読み進めるのが、苦痛なんですよ。そんな苦行を、なんでいちいちしなければいけないのか、意味がわからないです」
彼はそう言っていました。その後いろいろ話を聞くと、要するに読書という行為を、勉強という行為の延長として捉えていることがわかりました。
つまり、学生時代に無理やり本を読まされた。だから、読書を宿題することや試験勉強することと同義と捉えているのです。あのときの苦行だったという勉強の原体験が、ある意味トラウマになっているそうです。
「なぜ、そのトラウマを喚起してまで、読書しないといけないのか?」
そう言われてしまうと、僕にも納得できることはありました。読書好きには、本を読むことはエンタメ=娯楽です。でも、読書が嫌いな人からすれば、読書は娯楽と認識されていなかったのです。
読書という行為は、時間が取られます。1冊読むだけでも数時間はかかります。ちなみに、僕は速読否定派です。
「そんな時間をかける行為を、なぜしなくちゃいけないのかと。忙しくて本を読んでる場合じゃないですよ」
そういうAさんに「では、暇なときは何をしてるんですか?」と聞いたら「ネット動画を見るか、ゲームをしていますね」との答えが返ってきました。
読書好きの僕からすると、ネット動画を見たり、ゲームしたりすることのほうが、よほど時間がかかる気がするのですが……。
ただ、まあ、これもわからなくはない理由です。読書好きを公言している僕だって、なかなか分厚い本で、それも上下巻セットだったりすると、自分で「読みたいな」と思って買ったはずの本なのに、読み始めるのに気後れする場合があります。
実際に読み始めてしまえば、ぐんぐん進んでいって、その気後れも徐々に減っていくのですが、読む前にためらってしまう気持ちはわかります。