活発な議論の会議がロクな結論にならない理由

活発に議論されるほど、「最適」といえる結論から遠ざかる傾向にあるようです。その理由と解決法をお伝えします(写真:xiangtao/PIXTA)
「ざっくばらんな議論がなかなかできない」のは日本の会議の特徴です。指名されないと発言せず、気まずい沈黙が流れることもしばしば。しかし、「活発に議論されるほど、およそ『最適』といえる結論から遠ざかる傾向にある」と『SUPER MTG スーパー・ミーティング』の著者スティーヴン・ロゲルバーグ氏は警鐘を鳴らします。一体、何が問題なのでしょうか?

大企業のエース社員が話し合って「失敗」する理由

世の中には、立派な企業が満を持して発表した新製品が、ものの見事に失敗したという例があふれています。大企業の優秀な社員が集まり、何度も会議や検討を重ね、いけると革新してゴーサインを出したはずなのに、大コケ――そんな例です。

例えば、コカ・コーラは、伝統的な「コーク」の製造を中止し、代わりに「ニュー・コーク」という新しいテイストのドリンクを主軸にすると発表したことがあります。このとき、消費者から浴びたのは喝采ではなく「大ブーイング」でした。伝統的なコークを愛するファンの存在こそがコカ・コーラの命綱なことは誰でも知っているはずなのに、なぜこの反応を予想できなかったのでしょうか?

研究によると、この種の判断ミスを起こす最大の要因は、ミーティングでなぜか必要な情報が出てこないことにあるといいます。そのため、どんなにミーティングを重ねても、正しい結論に達することができません。話せば話すほど、最も重要な議題は陰に隠れていくのです。

ミーティングの出席者たちは、本当に必要とされるアイデアや知識を、ミーティングの場で発表しているのでしょうか?

ガロルド・ステイサーとウィリアム・タイタスという2人の教授が、ミーティングでの情報共有に関する実験を行いました。2人は被験者を集めると、それぞれの被験者にミーティングで必要になる情報を与えます。すべての被験者が与えられる情報もあれば、特定の被験者しか与えられない情報もあります。

この実験のミソは、「それぞれの被験者がミーティングの席で『自分しか知らない情報』を提供すると、理想的な決断につながる」という点です。そして、被験者が知っている情報を出さずにいると、間違った決断につながります。

実験では、こんな状況を用います。

ある委員会のメンバーを選ぶためのミーティングで、候補者は2人に絞られているという状況です。すでに詳細な面接を行い、経歴のチェックも済んでいます。候補者2人の名前は、仮に「ミズ・ゴールド」と「ミズ・テイク」とします。

出席者の全員が、事前に自分だけに与えられた情報をミーティングの場で発表すれば、ミズ・ゴールドのほうがはるかに優れていることが明確にわかります。しかし、全員が知っている情報だけで判断すると、ミズ・テイクのほうが採用するにふさわしいという結論になってしまいます。ミズ・ゴールドの優れた点を知っているのは、その情報を与えられた一部の出席者だけで、その情報が表に出てこないと、正しい決断ができなくなる、というわけです。

優秀なミズ・ゴールドの採用率は…

このような実験を65回行ったところ、ミーティングで理想的な決断に到達できるのは全体の20%以下という結果になりました。つまり、8割以上の確率でミズ・テイクのほうが採用されるということです。

共通していたのは「出席者は全員が知っている情報しか出さない」ということでした。自分しか知らない情報は、たとえ議題と大きな関係があってもミーティングの場で発表されることはありません。