トランプと対峙する民主党有力候補4人に注目

2019年12月19日、ロサンゼルスでの民主党候補者討論会。右からバーニー・サンダース氏、ジョー・バイデン氏、エリザベス・ウォーレン氏、ピート・ブティジェッジ氏(写真:共同通信)
4人にまとまってきた民主党大統領選挙候補者。外交では既存の国際秩序を重視する主流派の外交路線に加えて、「プログレッシブな外交」を掲げる勢力も力を伸ばす。

アメリカ国内および世界では、民主党有力候補の動きに注目が集まっている。

民主党予備選を見据えた全米の世論調査では、バイデン(Joe Biden)前副大統領、サンダース(Bernie Sanders)上院議員(無所属、バーモント州)、ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員(民主党、マサチューセッツ州)が長らく上位を維持し、いわゆる「トップ3」を形成してきた。

また、インディアナ州サウスベント市のブティジェッジ(Pete Buttigieg)前市長は、序盤に予備選が行われる州の世論調査で好位置につけており、この4者のいずれかが、本選挙でトランプ大統領と対峙する公算が大きくなっている(1月現在)。

これまで、民主党予備選に向けた党内議論では国内問題が大きな比重を占め、外交問題が主要争点となる場面は少なかった。しかし、トランプ政権によるイラン司令官殺害(1月3日)などをきっかけに、様相が一変する可能性もある。

こうした状況を念頭に、民主党有力候補の外交政策について、候補者間の違いや、トランプ外交との向き合い方に注目して概観してみたい。

穏健派と台頭する左派の対立図式

民主党の有力候補4人については、さまざまな尺度から比較がなされている。候補者の年齢に注目すると、サンダース氏、バイデン氏、ウォーレン氏の3者が70歳代である中、37歳のブティジェッジ氏は異彩を放つ存在である。

本記事は『外交』Vol.59(2月1日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

公職経験の長さという点では、バイデン氏とサンダース氏が長い経験を持つのに対し、上院議員選挙に勝利する2012年まで大学教授であったウォーレン氏と、同年にサウスベント市長となったブティジェッジ氏は、相対的に公職経験が短い。

副大統領になるまでのバイデン氏は、実に36年間にわたって上院議員(民主党、デラウェア州)を務め、この間、上院外交委員会の委員長なども務めた。サンダース氏も、上院議員(2007年から)になる前は下院議員(無所属、バーモント州)を16年間、さらにその前はバーリントン市長(バーモント州)を8年間務めている。

こうした公職経験の長さは、候補者としての「強み」にも「弱み」にもなりうるものであり、この点は特に、アメリカ政界の主流に身を置き続けてきたバイデン氏の選挙戦を考えるうえで重要である。

また、支持層の特徴という点では、ウォーレン氏とブティジェッジ氏が高学歴のエリート層を主たる支持基盤とするのに対し、バイデン氏とサンダース氏は白人労働者層に支持を広げていると見られる。

そして、4者の外交姿勢を理解するうえで最も重要と思われるのが、党内穏健派と党内左派の対立図式である。

民主党の中では、かねて穏健派とリベラル派の対立があった。クリントン政権期を中心に、穏健派が党内で優勢となる時期もあったが、2000年代に入ってからの穏健派は、党内での発言力を低下させている。

対照的に、今日の民主党で急激に勢力を伸ばしているのが、サンダース氏に代表される党内左派である。こうした党内左派は、経済政策の分野を中心に、従来のリベラル派よりもさらに左寄りの政策を打ち出しており、日本のメディアでは「急進左派」「最左派」といった表現で紹介されることもある。