アメリカでは1日に5500万回ものミーティングが行われているという試算があります。出席者の時給に換算すると、会議にかかるコストは年間1兆4000億ドルで、これは2014年のアメリカのGDPの8.2%にあたる数字です。
さらに付け加えると、ここまでの時間とお金を投資しているにもかかわらず、それに見合ったリターンは得られていません。企業の人事専門サイト「Salary.com」が職場での時間の無駄使いについて調査を行ったところ、回答者3164人のうち、実に47%が「ミーティングが多すぎる」ことがいちばんの無駄だと答えました。「Too many meetings」とグーグルで検索すると、ヒット数は20万件以上にものぼります。
役職についていないいわゆる平社員の場合、平均して1週間に8回、ミーティングや打ち合わせに出ているという試算があります。マネジャー職になると、その数は12回に増加。もちろん職種による違いもあり、ホワイトカラーはそのほかの職業に比べてミーティングが多くなる傾向があります。また、役職が上がるほど、出なければならないミーティングは右肩上がりに増加します。
幹部層のミーティングに関して、興味深いデータが存在します。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、コロンビア大学、ハーバード大学が共同で「CEOの時間の使い方」に関する調査を行ったところ、CEOは労働時間の60%、リーダークラスは56%をミーティングに費やしているという結果が出ました。
スケジュールを細かく見ると、中には「ミーティングのためのミーティング」まであり、たいていの職場では頻繁にミーティングがあること、そして役職が上がるほど出席しなければならないミーティングの数もおのずと増えることが浮き彫りになる結果でした。
ちなみに、1976年時点では「アメリカで1日に開かれるミーティングは1100万回」との報告があります。この40年ほどの間で、ミーティングの数は確かに増えたことがうかがえます。では、なぜこんなにも会議は増えたのでしょうか? リーダーの性格という問題もあります。例えば、自分で物事を決めたがらないリーダーや周囲に向けて仕事をしているアピールをしたがるリーダーは、ミーティングを好む傾向にあります。
しかし、それだけではありません。大きな要因として考えられるのは、「組織の民主化」が進んだことです。現代の職場では、従業員がより積極的に意志決定に関わることが求められます。従業員の声を集め、それをチームの意志決定に反映させることでチームとしての協働感を育み、大きな力を発揮する――そういった価値観を体現しているのが、まさにミーティングという存在です。
トップダウン型のマネジメントが昔ほど当たり前ではなくなっており、組織はヒエラルキーからフラットへと変化しています。そういった時代の流れも、ミーティングの増加を後押ししているといえるでしょう。