教育の専門家は、このよくある思考プロセスを「ヒューリスティック思考」と名付けている。すばやく簡単に判断できるので、ほとんどの場合は役立つが、一方で似たような経験の積み増しになり、発展性に欠ける面もある。ところが天才は、過去の経験が照らす光を超えて思考する。彼らは、経験の光が投げかける明るさに頼らない。天才とは、そうした光の外側にある世界を夢想する人々なのだ。
4、無関係のアイディアを融合させてみる
アインシュタインは、ドイツのゲッティンゲンの数学者が発明した四次元幾何学を使って、空間と時間の相対性を定義した。アインシュタインがその偉業を成し遂げたとき、数学者は自分たちの想像をはるかに超えた定義に度肝を抜かれた。アインシュタインには、彼らに見えなかった新たな可能性が見えたのである。
カリフォルニア大学デービス校で、天才と創造性とリーダーシップを研究するディーン・サイモントン教授は、著書の『科学の天才(Scientific Genius)』でこう述べた。「天才は皆、現在の問題とまったく関係なさそうなアイデア同士をまず組み合わせ、そこから革新的な解決策を導き出す」。
つまり天才は、アイデアを絶えずぶつけて融合させながら、発見につなげようとしているのだ。天才は隠れた関係性を見出すと、数字や公式よりも視覚的なイメージで定義づけることが多い。
有機化学者のF・A・ケクレは、6匹のヘビが輪になって互いの尾をかんでいる夢を見て目覚めたとき、ベンゼンの分子構造が頭に浮かんだという。発明家のニコラ・テスラは、沈んでいく太陽が地球の周りを回っているように見えることから、内部で磁極が回転する交流発電機を思いついた。
天才は生産性も恐ろしく高い。アメリカで1093件の特許を取ったエジソンは、10日にひとつ発明することを目標にしていた。J・S・バッハは声楽曲(カンタータ)を毎週1曲書き、アインシュタインはかの相対性理論以外にも248本を超える論文を発表した。
もちろん、天才のすべての産物が世界を変えるわけではない。彼らは役に立たないものも大量に生み出す。その壮大なアウトプットから掘り出されるダイヤモンドはごくわずかだ。エジソンの1000を超える特許のうち、電球に関するものはたったひとつだったのである。
(翻訳:三輪 美矢子 )