街中に続々登場「シェアサイクル」の大きな課題

どちらかといえば、鉄道やバスだけではカバーできない移動需要をしっかりつかみ、鉄道やバスと組み合わせてもらうことでまちを快適に移動してもらおうという意識が見える。台湾ではバイクの利用が多いこともあり、シェアサイクルという「手段」を通じて環境負荷の低いまちをつくろうとしているようだ。

中国と台湾のシェアサイクル事情を比較すると、大きな違いとしてはポートを持たないものが主流になっている中国のシェアサイクルに対し、台湾のシェアサイクルはポートを持つものが主流だ。そして中国はビジネスベースで展開し、台湾はまちづくりベースで展開している。

ひるがえって日本のシェアサイクルを見ると、ビジネスベースで軌道に乗せつつ、違法駐輪問題の解決やまちの新しい移動手段の創設といった動機が強いように感じる。

ただ、いくつかのシェアサイクル運営者に実情を聞いたところ、赤字のところが多く、ビジネスベースでシェアサイクルを運営していくことには限界があるという声を何度か聞いた。実際にメルカリ子会社のソウゾウ(解散)が運営していた「メルチャリ」は2019年6月にメルカリのグループ外へ事業承継した。

東京の中心部でよく見かけるドコモ・バイクシェア。再配置が間に合っておらず、ポートから自転車があふれることも(筆者撮影)

ほかのシェアサイクルもドコモ・バイクシェアこそ高回転率であるが、それ以外は大幅に回転率が落ちる。ドコモ・バイクシェアも東京での利用を見ているとマナーの問題や、電動自転車がゆえの充電が切れてしまい利用できないという問題、再配置が間に合っていないなどさまざまな課題がある。

では、シェアサイクルは今後衰退あるのみなのか、とつい考えてしまうが、そうではない。今後はシェアサイクル事業の立ち位置を捉え直すことが重要になってくるだろう。

自転車活用推進法が施行

自転車の最大の利点は自動車や鉄道に比べてスペースをとらないことだ。スペースをとらないために、小さなスペースでも置きやすく、面的に整備をすれば非常に気軽に利用できる。まちづくりから見れば、シェアサイクルで移動しやすいまちを作ることで快適なまちを生み出し、エリアの価値を上げることができるのだ。

冒頭で挙げた大手町や有楽町でシェアサイクルを利用しているサラリーマンを見かけることが増えたのも、ポートの整備で鉄道やバス、タクシーよりも使いやすくなり、小回りが利き、目的地に1番近いところまでいける交通手段となったからだ。

また、自転車によるまちづくりを考えるにはQOLの観点も重要だ。2016年に成立し、翌年施行された「自転車活用推進法」に基づいて、2018年6月には「自転車活用推進計画」が閣議決定された。その中には「QOLの向上に資するよう、国民のヘルスリテラシーの向上を図るとともに、自転車の利用促進につながるまちづくりと連携し、日常の身体活動量の増加・底上げを図る」という文言がある。

そして具体的な施策としてシェアサイクル関連では「シェアサイクルと公共交通機関との接続強化や、サイクルポートの設置促進等により、シェアサイクルの普及を促進する」とともに、「社会実験等を踏まえて、駐輪場やシェアサイクルの運営、放置自転車対策等の効率化に向けて自転車のIoT化を促進する」としている。

つまり、国としては自転車を人々が幸せに生活するためのツールの1つとして活用していこうということだ。そしてシェアサイクルについてはIoTを活用しながら鉄道やバスといった公共交通機関との接続強化をはじめとしたまちづくりと連携を図るとしている。すると、今後のシェアサイクル活性化、ひいては自転車活用推進のためにすることも見えてくるはずだ。