今月に入ってから、中共軍は台湾対岸の中国大陸の一部で、陸海空連携の水陸両用の訓練を行ったというが、全体として、中共軍機が台湾海峡の防衛識別ラインを越えて台湾の周辺海空域に侵入した回数は今年に入ってからだけでも2076回に及ぶとされている。また、本年9月にはいってから、中国の空母打撃群が台湾の北端付近の海域を通過し、日本の接続水域に侵入したという。
米国政府は台湾との間に外交関係がないにもかかわらず、「台湾関係法」(1979年4月10日)を議会主導の下で通過させ、国内法上、実質的に台湾に「防御的性格の兵器を供与する」ことを約束している。今日、台湾海峡の現状を維持する上で、この「台湾関係法」は決定的な重要性を維持している。
ただし、注意を要することは、トランプ大統領候補が、米国は台湾に対して防衛のために過剰な経費を支出してきたが、今後は、台湾側がもっと多くの経費を負担すべきだ、と述べていることである。これまで米台間で、武器供与が行われた際、特に米国から費用持ち出しが議論されたことはなかったので、今後の米国の対応には十分な警戒が必要である。トランプは最近、「我々は保険会社と何ら変わらない。台湾は我々に何もしてくれない」と発言しているが、この発言が米国を代表したものか否か明白ではない。
今月9日、米議会下院は「台湾紛争抑止法案」を全会一致で可決した。中国が台湾へ侵攻した際、中国高官が世界中に持つ不正資産の公開や本人とその家族による米金融システムへのアクセス遮断、資産凍結などが出来る制裁措置が盛り込まれている。
この法案が成立すれば、中国共産党政権が台湾侵攻に踏み切った場合、中共幹部とその親族の米国での隠し資産が白日の下にさらされるだけでなく、制裁の対象となり、凍結、没収される可能性がある。中国の台湾侵攻を阻止するのが法案の狙いで「戦争阻止法案」となる可能性が十分にある。多くの中国共産党幹部が米国に資産を隠し持っていることはよく知られた公然の秘密といえよう。