〈いつの間にやら戦争に〉中国の台湾への軍事行動拡大、「台湾への攻撃」見極めの難しさ

2024.10.18 Wedge ONLINE

 2024年9月19日付フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙のキャスリン・ヒル特派員が、中国の軍事活動の活発化が、平時から台湾に対する戦争への移行を見極めることを難しくしている、とする解説記事を書いている。

(Andrea Nicolini/gettyimages)

 台湾の顧立雄・国防部長(国防大臣)は、中国の軍事活動の活発化は台湾への攻撃の前兆を見極めることを難しくするだろうと警告した。

 顧氏は、台湾は「突発的な有事」に対応する能力をテストする必要があり、有事に対する台湾の反応時間は「我々が過去に想定していたほど長くはない」と述べ、中国の軍事活動の規模はますます大きくなり、訓練から大規模な演習へ、演習から戦争へと移行するタイミングを見極めるのが難しくなっている」と語った。

 彼の発言は、中国が戦争の閾値以下で軍事的動きを徐々に拡大していることが台湾の防衛にもたらす課題を示している。

 人民解放軍は、5月に頼清徳総統が就任して以来、台湾近辺のパトロールや訓練をかつてないレベルに強化している。今年、台湾の防空識別圏への中国軍の侵入は2076回を記録した。9月18日早朝には、中国の空母群は台湾の北端付近の海域を通過した後、日本最南端の2つの島の間の狭い海峡を通過し、初めて日本の接続水域に侵入した。

 9月上旬、人民解放軍は台湾の対岸において、最大規模の水陸両用上陸訓練を実施した。これは台湾侵攻のための訓練と見なされている毎年恒例の訓練である。

 中国はまた、沿岸警備隊、海洋調査船、海上保安船などの非軍事的な公船の台湾周辺海域への配備を増やしている。これらの船舶により、潜水艦作戦のための海洋データを収集し、封鎖に使用できる手段をシミュレートするための任務を遂行しているらしい。

 台湾は、ドナルド・トランプが大統領選で勝利した場合に米国が台湾防衛支援を弱めるのではないかとの懸念の中、防衛強化の圧力を受けている。台湾関係法の下、米国は、台湾の将来を非平和的手段で決定するいかなる努力も、米国にとり重大な懸念であるとみなしている。

 同法は、台湾に防衛兵器を提供し、台湾の安全を脅かす強制に対抗する米国の能力を維持することを米国に約束させている。しかし、トランプは最近、「我々は保険会社と何ら変わらず、台湾は我々に何もしてくれない」ので、台湾は米国に防衛費を払うべきだと述べた。頼政権は来年度の国防費を7.7%増の6470億台湾ドル(約200億米ドル) にすることを提案した。

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警鐘を鳴らす台湾

 本年5月の台湾新政権発足後も、中台間の没交渉状態は継続し、中国は軍事力を含め、様々な分野で台湾に対し圧力を強化しつつある。同時に、中国からの訪台旅行の一部は再開するなど、従来通り、中国は硬軟織り交ぜた台湾への対応を行っている。

 さらに、今年6月には、中国は「頑迷な「台湾独立」分子による国家分裂・扇動の犯罪に対する意見」(いわゆる台湾独立処罰22条意見)を公表し、「台湾独立分子」が国家や国民に対して特に深刻な危害を加えた場合には死刑を適用すると明記した。

 上述の記事は、最近の台湾の顧立雄・国防部長(国防大臣)の言葉を引用し、「中共軍の台湾侵攻への動きはその前兆をとらえることが、ますます困難になりつつある」として、予測不能なくらいの突然の中共軍の動きに備えなければならない、と述べている。顧氏は「中国の軍事行動の規模はますます大きくなっており、訓練から大規模な演習へ、演習から戦争へと移行するタイミングを見極めることが難しくなっている」と述べている。

 さらに、頼清徳総統自身、今年5月には中共軍の訓練や演習のレベルがこれまでにないレベルに達しつつあると警鐘をならした、という。