上記の社説の、ミドルパワーのアフリカへの関心を効果的に利用すべきだとの指摘は、現状の一面において的確な指摘ではあるが、アフリカの発展について論ずるのであれば、社説中に簡単に言及のある、債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約となっていることを無視することはできず、これらの面を合わせて考慮しなければバランスが取れない。
8月28日付ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の解説記事によれば、アフリカの対外債務は昨年末で1兆1000億ドル以上に達し、20カ国以上が過剰債務を抱え、外国債権者の数と多様性が従来になく際立ち、解決を困難にしている。対外債務はナイジェリアで400億ドル、ケニアで350億ドル、ウガンダで120億ドルに達し、債務返済のための増税に反対する大規模な抗議活動やインフレ、極度の貧困の下での反政府デモが頻発している。
これらの国の債務の70~80%は中国が債権者であるが、中国は、債務救済に消極的で、債務不履行に陥ったザンビアは、債務再編まで4年近くかかった。この債務問題は、アフリカから成長の機会を奪い、社会的不安定を煽るものである。
また、人道的危機については、現在、スーダン、マリからナイジェリア北部に至るサヘル地域、中央アフリカ、コンゴ民主共和国東部、ソマリア、リビアといった地域で、内戦や過激派イスラム組織との武力衝突といった状況がある。特に、スーダンでは、1年以上続く内戦で850万人の避難民が生じており、反乱軍を支援するアラブ首長国連邦が紛争終結の鍵を握るとされている。また、コンゴ民主共和国東部ではルワンダが介入する長年の紛争で730万人が故郷を追われた避難民となっているとされる。
エネルギーの面でもアフリカが取り残されているとの指摘がある。8月28日付のFT紙の論説によれば、アフリカの原油生産国は石油ブームに乗り遅れており、この地域の主要石油輸出国10カ国は、現在よりも原油価格が安かった2010年よりも貿易黒字は減少しており、債務負担は増加し、そして原油生産量が大幅に低下している。
これは長年の投資不足と米国のシェールガスやガイアナ等の新たな石油生産などの影響もある。これらの国の石油生産の減少は、経済開発や気候変動対策としての長期的なエネルギー転換のための資金動員にも悪影響を及ぼすことが懸念されている。
アフリカ諸国にとって、インフラも重要であるが、内戦や紛争を抱えている場合にはその解決が最優先であり、医療などの社会サービス、雇用創出のための投資、気候変動の対策、石油産出国であれば新規油田や設備のメインテナンスのための投資などに資金が配分されなければならず、国ごとに優先順位は異なると思われ、また解決には時間がかかる問題も多い。従って、アフリカ支援のためには総合的でまた長期的な取り組みが必要であり、ミドルパワーといえども、1国だけの努力には限界があろう。
なお、そのような観点からは、日本のイニシアティブとしてアフリカ開発会議(TICAD)があり、19年の第7回TICAD以来、アフリカ連合(AU)の「アジェンダ2063」に沿った協力を進めている。