東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2024

勝ちきれない状況に苦しむ髙津監督
「落ち着かない」試合が続く理由とは――

2試合連続KOの高橋奎二に伝えたこと

――さて、この9連戦直後の17日の広島東洋カープとの一戦では、高橋奎二投手が7回2失点の投球で勝利投手となりました。その前の週の横浜DeNAベイスターズ戦では2回途中7失点で早々にKOされましたが、彼の好投についてはいかがでしょうか?

髙津 彼の場合は、いい方にも悪い方にも劇的なピッチングをするのが特徴です。確かに今回はいいピッチングでした。でも、この内容を次回以降も続けることができるのか。それがもう何年も、彼にとっての課題です。彼に期待するものは多いし、僕としても高いものを望んでいます。

――前回と今回とでは何が違ったのでしょうか?

髙津 技術的なこともあるけれど、相手チームとの相性といった要素もあります。詳しいことは言えないけれど、そうしたことを加味してローテーションを決めているし、今回は奎二のストロングポイントが見事に生かされた。それがハマったときにはこういう試合になることが多い。今回は無四球でしたからね。

――確かに、高橋投手はカープ戦での登板が多いですね。対戦防御率も1・75と結果も残しています。前回のベイスターズ戦の後、監督自ら高橋投手に話をしたと聞きました。

髙津 彼の場合、投げるボールは間違いないんです。変化球もたくさん持っているし、データを見ても、その変化量も他の投手と比べてもとてもいい。ただ、どうしても「全力で腕を振ればいい」というピッチングが続いています。でも、大切なのは「アウトの取り方」であって、自分のボールをどのように生かすか、どうやって相手からアウトを奪うのか、その辺りをまず考えた上で、相手のデータをしっかりと頭に入れて戦ってほしい。「ピッチングとは、打者心理とは……」そんなことを伝えました。

――カープ戦の試合後、「本来ならば二軍に落とされていても仕方がないピッチングが続いていた」と本人は語っていました。

髙津 確かに、それまでの2試合はそうなっても仕方のない内容が続いていました。ただ、チーム事情もあったので、そのまま一軍で投げさせることにしましたけれど。

――この日の試合後、監督は「野球は難しい」としみじみ語っていました。この言葉の意味を改めて教えてください。

髙津 難しいです。本当にわからないことばかりです。人間がやるスポーツですから、コンディションによっていいときも悪いときもあるのは理解しています。でも、たった1週間でここまでガラリとピッチング内容が変わるものなのか? この点をきちんと分析して、次の奎二の投球に期待したいです。それにしても、野球というのは不思議な生き物です。なかなか思い通りにはいかないし、考えてもいないようなことも起こる。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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