――ファームでは育成枠の山野太投手が順調な仕上がりを見せています。また、昨シーズン8勝の原樹理投手、あるいは移籍後最多となる7勝を挙げた高梨裕稔投手も虎視眈々と一軍入りを狙っています。手薄な一軍投手陣を充実させるための候補は誰でしょうか?
髙津 難しいことを聞きますね(笑)。具体的な名前は挙げないけど、「ぜひ早く一軍に戻ってきて、チーム力を上げてほしい」と思っている選手は何人かいます。ファンのみなさんも、想像はついているかもしれないけど、「彼がいたら、アイツがいたら……」と考えることはもちろんあります。でも、そんなことを言っていても仕方ないですけれど。
――故障者が復帰するのを待つしかない現実もありますが、こうした状況下で監督としてできることはあるのでしょうか?
髙津 ケガをしないように、その選手がどんなコンディションなのかをきちんと観察し、把握して起用することは、監督として必要なことだと思います。でも、ケガをしてしまった後にできることとなると、決して焦らせるようなことは口にしないことぐらいなのかな……。「早く治せよ」とは言わずに、「どうだ、大丈夫か?」と声をかけることですね。無用な焦りを招くようなことは絶対にしたくないです。焦らせても治るわけでもないですし。
――選手を観察することには、より繊細さや注意深さが求められると思います。
髙津 非常に難しいことですね。その選手の動き、顔色、目つきなど、自分なりに注意して見ているポイントはあります。もちろん、それだけではわからないこともたくさんあるので、直接話しかけることもあれば、トレーナーさんに「最近、彼は元気ないように見えるけどどうなの?」と間接的に尋ねることもあります。選手としては「監督には言わないでくれ」とトレーナーに話すこともあるでしょう。それで、僕に報告しないケースもあるかもしれない。だからこそ、僕自身の目でよく見ておくことが大切になると思います。
――監督から選手に直接話しかける際には、どんな言葉をかけるのですか?
髙津 本人に対しては「おはよう」とか、「元気か?」程度くらいしか話しかけないですね。たまに監督室に呼んで個人的に深い話をすることもあるけど、本当に何かを伝えたいときは全員を集めて、みんなの前でしゃべることが多いですね。
――21年シーズン終盤、優勝を目前に控えた段階でみんなを集めて口にした「絶対大丈夫」が、まさにその実例ですが、髙津監督が現役時代、野村克也監督から声をかけられたりしたときはどのような心境だったのですか?
髙津 やっぱり嬉しいですよ。気を遣ってもらって悪い気はしないですから。もちろん、過度な気遣いに対しては「うっとうしい」と思う人もいるかもしれないけど、「元気か?」「どうだ?」ぐらいの声掛けならば、イヤな気になる人はいないんじゃないのかな?