――堂林選手のフォアボールにしても、秋山選手のホームランにしても、その場面での田口投手の心境は理解できますか?
髙津 秋山選手にホームランを喫した一球なんて、そもそもあんなところに投げるつもりはなかったと思います。あれは失投中の失投でした。100%初球から振ってくる場面、しかもスライダーを狙っている場面で、そのスライダーを甘いところに投げてしまった。それまでは「ホームランに警戒しよう」という思いで、「低く、低く」投げていたのに、あの1球ですべてが終わってしまった。すごくもったいなかったですね。それまでは全神経を集中して、丁寧に投げていたのに、ストレートのフォアボールを出したことで、心の隙間というのか、フッと気が抜けてしまった瞬間がありましたね。僕自身の経験からも、それは手に取るように理解できました。
――試合後、田口投手が口にした「勉強になりました」という言葉を聞いて、監督はどのような印象を持ちましたか?
髙津 「クローザーというのはもっと奥深いものだけれどな」と心の中で思っていました。「もっともっと、しんどい場面はいっぱいあるよ」というのが、率直な感想ですね。試合の勝ち負けは、当然監督である僕が背負うものだけれど、打たれた責任に関してはクローザーが負わなければいけない。こちらがリードしている中で、相手ベンチからは代打、代走が次々と出てくるのが9回のマウンドです。それを「0」で抑えることがどれだけ難しいことか。言葉で表現できない程の難しさ、それを田口はこれから経験していくと思います。
――先ほど監督が言ったように、この経験を次にどう生かしていくか。それが、現時点での田口投手に求められるものとなりますね。
髙津 あの試合は痛い目に遭いましたけど、それでも、開幕以来クローザーとして十分に頑張ってくれています。いいスタートを切ったと思います。ぜひ、この経験を糧にして、これからのピッチングに生かしてほしい。田口について、今はそんな思いがとても強いですね。5月からは6連戦が続きます。これからも、じっくりと腰を据えて戦っていきます。引き続き、「応燕」をよろしくお願いします!
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