――開幕前には「誰がクローザーとなるのか?」と注目を集めていましたが、田口麗斗選手が抑えを任されています。これは、いつ頃決定したのか、その理由は何ですか?
髙津 決めたのは開幕ギリギリのことです。オープン戦全日程が終わって、「さぁ、どうするんだ?」となったときに「田口にしよう」と僕が決めました。その理由は、いろいろあるんですけど、よく言われるように「度胸があるから」とか「負けん気が強いから」という理由で選んでいないことは確かです。クローザーってそんな簡単なものではありません。もちろん、そこもゼロではないですけど、そこは小さな一部です。そこ以外の大切な部分があって…我々の時代で言えば佐々木(主浩)さんや岩瀬(仁紀)はそれを持っていました(笑)。
――田口投手の決め球であるスライダーであったり、ストレートのスピードであったり、技術面での要因が決定の理由ということですか? それとも、結果を引きずらない「切り替え力」などのメンタリティが優れているからでしょうか?
髙津 プレー面もそうですし、クローザー向きのメンタルも持っていますよ、田口は。彼が切り替え力があるかどうかは、僕にはわかりません。ちょっとうまく説明できないんですけど、「度胸があるから」とか「空振りが取れるボールがあるから」という理由だけで選んだわけではなくて、いろいろシミュレーションをして、「誰をどこで起用すれば、それぞれが力を発揮できるのか?」ということをいろいろ考えて、最終的に決めました。
――田口投手には、「今年はお前に任せた」と、監督自ら伝えたのですか?
髙津 直接、告げてはいません。少なくとも、僕は伝えていません。ピッチングコーチには、開幕する2~3日前かな、それぐらいに伝えました。もしかしたら、コーチから伝えられているかもしれないけど、たぶんコーチも伝えていないと思いますね。
――監督は現役時代ずっとクローザーを任されてきましたけど、事前に伝えられてはいなかったのですか?
髙津 僕は日本だけでなく、アメリカや韓国や台湾とか、いろいろなところで野球をやってきましたけど、ヤクルト時代の野村監督もそうですし、シカゴ・ホワイトソックス時代のオジー・ギーエン監督もそうですし、事前に「君が抑えだ」と言われたことが一回もないんです。だからというか、変なプレッシャーをかけるのもイヤですし、僕も田口には伝えなかったです。でも、特に深い理由があって伝えなかったわけではないですけど。
――現役のときに「事前に伝えてほしかった」という思いはなかったのですか?
髙津 なかったですね。よくわからないまま初セーブでしたし、自然とその後もそうなっていったというか。田口については、いいスタートダッシュを切って、頑張ってくれているので、ぜひその調子でこれからも進んでほしいと思っています。
――監督4年目のシーズンが始まりました。今年は声出し応援も解禁され、かつての日常が戻ってきた感もあります。就任と同時にコロナ禍に見舞われた監督にとって、この光景はどのように見えていますか?
髙津 いいですね、あの光景は。試合に勝って、一塁側にみんなで整列をして、スタンドに手を振りますよね。あれは幸せな瞬間です。あのときに流れる「This is Me」を聴きながら手を振るのはすごく幸せですよ。そのときに「あぁ、こんなにたくさんのお客さんがいたんだ」とか、「こんなに傘の花が咲いているのか」と確認できるのは、すごく嬉しいです。
――ペナントレースが始まった今、監督からのメッセージをいただけますか?
髙津 僕たちの野球は、一つずつ丁寧にプレーしつつ、その逆に失敗を恐れずに思い切ってプレーする部分が同居しています。だから、一見するとものすごく細かい野球をやっていることもあれば、逆に「?」と見えるプレーがあったりするかもしれない。僕らは毎試合、細かく丁寧に、そして思い切ったプレーをしていきたいと思っています。先日のWBCもそうですけど、ハラハラドキドキしながら、みんなで大騒ぎして見ていただきたいです。ようやく、そのスタイルが戻ってきた今、ぜひ野球を楽しんでほしいと思います。引き続き、「応燕」よろしくお願いします!
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