「家族」というチームのつくり方

「スマホ育児」でうちの子に起きたこと

本当は怖い?「スマホ育児」

冒頭の問いに戻り、スマホに関してです。スマホなどで動画を見せないようにすべきかいなか、それに関してもちょっと怖いデータがあります。

6歳までの間に、発達の遅れが見られた子どもの行動習慣を追ってみると、とある共通原因があったそうです。それは「生後6カ月から1歳半まで、早期教育ビデオ教材を1時間以上見せていた」というものでした。

早期教育ビデオを見せると、多くの子どもはおとなしくなります。ですが、そのときの子どもの脳波を調べると、一種の脳梗塞に近い状態を起こしていたそうです。
さらにそうした子どもたちの脳活動をMRIで調べてみると、左脳のウェルニッケ野という、言葉を理解する領域が萎縮していたことが明らかになりました。言葉で話しかけられていないので、言葉を理解するための神経ネットワークが作られなかったようです。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。
3歳半くらいまでは、映像を認知することが難しいことがわかっています。子どもは、画面が切り替わることが理解できないのだそうです。アヒルが歩いていて、画面が切り替わってアップになる。すると、アヒルが2匹になったと思うそうです。そしてまた画面が切り替わってアヒルの後ろ姿が映ると、アヒルが3匹になったと思う。つまり、意味がまったくわからないというわけです。
ストーリーも、画面が切り替わるたびに新しい登場人物が出てくるため、理解不能だと言います。時系列が過去に戻ったりしようものなら、何が行われているか把握することは、3歳半までの脳では処理できないのでしょう。
幼い脳はそうした処理に追われて、様々に切り替わる画面を追うことに能力を費やされ、言葉に反応する機能をオフにしてしまうのです。

それにもかかわらず、私は自分の子どもにそうした映像を積極的に見せていました。「すごい集中して見てる!」と喜んでさえいたのです。今思い出しても背筋が凍る思いです。

きわめつけは、英語教育の映像です。私は、自分の子どもに英語教育の映像を見せていました。
幼少期から英語に慣れさせることでネイティブに近い英語力が身につく、自宅まで来た販売員にそう説明され、「我が子は英語がペラペラになるかもしれない。グローバル時代には英語は絶対に必要だ!」と思った私は、生後半年のときに、英語教育のDVD購入を決め、自宅でDVDを流し、車に乗ったら後部座席で見せていました。

そのDVDを流すと、息子はすごくおとなしくなりご機嫌になるので、「なんてすごい映像なんだ!」と思っていました。「一緒に見ている私たち親も英語覚えられるかな」とか「将来子どもが海外に留学してそこに遊びに行っちゃったりして」と、のんきに妄想を膨らませていたりしました。

ですが、1歳半検診のとき、うちの子は、

・呼びかけても反応しない。
・ブロックを並べて整列させて遊ぶ。
・クレーン現象というのですが、ものを取るときに、自分の手を使わず、人の手を引っ張って取ろうとする。
・つま先立ちで歩く。

といった症状が見せました。
これらはすべて、発達の遅れが見られる子どもの特徴なのだそうです。スマホやDVDで映像を見せ続けたことが、発達の遅れにつながったと断定はできませんが、いずれにしても、私たち家族はこれを機に、育児の仕方をイチから見直すことになりました。

では、どうすればよかったのか。そして、どうやって発達の遅れを取り戻したのか。それを次回以降に解説していきます。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

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その仕事、部下に任せなさい。

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