成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。
この連載をまとめ、大幅に加筆・改稿した、ビジネス書『チームづくりの教科書』(高野俊一)が、アルファポリスより好評発売中です。
強いチームをつくるために、目標を掲げ、関係性をつくり、主体性を引き出すべきだと伝えてきました。この取り組みをすれば、確実にチームは強くなります。しかし、途中でくじけてしまう場合があります。いえ。むしろほとんどの組織が道半ばにして諦めてしまい、チームづくりをしなくなっているのです。
なぜそうなってしまうのか。それは、組織を変えるチームづくりの段階を「弾み車が回る」状態にまで持っていけていないからです。弾み車とは、弾みを利用し、回転を持続させ、回転の速さを一定にするための回転軸に取り付ける大きく重い車のことです。組織の改善は、大きな鉄の車輪を動かそうとするようなものです。
たとえば、直径2メートル、幅が1メートルもある巨大で重たい車輪を押したとします。ちょっと押したくらいではびくともしません。チームメンバーが力を合わせて押してみても動きません。あまりに動かないので、「これは動かないものなのではないか」と言いだすスタッフがいます。そこで、全員が全力を出して押し続けていると、ようやく1ミリ動きました。すると、「これだけ押したのに1ミリしか動かないなんて、やる意味あるんですか」と別のスタッフが言いだします。それでも押し続けていると、1センチ動きました。さらに1センチ、1メートル、ついに1回転し、そこから徐々に弾みがついてグルグルと回転を始めました。
組織の変革は、まさにこんな感じです。「目標を発表するから集まって」と声をかけたら、全然集まらなかったり、聞いている人がつまらなそうにしたり、否定的な意見を言ってきたりします。そして、関係性をつくろうといろいろな取り組みをしていると、反対勢力みたいな人が出てきて、活動を止めようとします。そのハードル1つひとつが、チームづくりをやめる理由になりえます。
チームづくりに限らず、すべての活動は、この「弾み車が回るまでの辛抱ができず諦めてしまったこと」で失敗するのです。身近な例では、私のYouTubeがそうでした。私が始めたのは2020年ですが、その前後で様々な人がYouTubeに参入しました。ですが、今も続けている人はごくわずかです。様々な事情があるとは思いますが、新しい取り組みというのは、途中でやめてしまう理由にあふれているのです。
「聞いていた話と違います!」
「やったことないからできません!」
「いやです! やりたくありません」
そんな拒絶反応にげんなりしたことはありませんか? チームづくりが止まってしまう一番の理由がここにあります。変化を嫌う人たちが「抵抗勢力の壁」として立ちはだかるのです。規模の大小にかかわらず、組織を運営していくうえで変化をしないという選択肢はありません。刻一刻と変わる社会状況のなかで、変化に対応できない組織はその存在価値を失ってしまいます。また、メンバー一人ひとりも、年数を重ねるごとに求められるレベルが上がります。いつまでもスキルアップできない人は本人のためにもなりませんし、チームの足を引っ張る存在にもなりかねません。
「現状維持は衰退なり」と言いますが、組織も人も、変化をしないということは後退しているのと同じです。常に新しいことに挑戦し、やったことのない仕事もどんどんやってみる。試行錯誤を繰り返したりしながら変化し成長することは、ビジネスの世界で生きていくうえで必要条件と言えるでしょう。それにもかかわらず、目の前の部下が「変化をしたくない」と駄々をこねてしまったら、あなたはどうしますか?