リーダーになって部下を持つと、「変わりたくない」人の多さに驚くでしょう。そもそも変化を好む人は少数派だと言われています。日本において、その割合は1~2割だという話を聞いたことがありますが、私の肌感覚としてもそれくらいのように感じています。
私はコンサルタントですので、企業に対して、システムや体制など様々な変化を提案するのが仕事です。するとどこの業界でも必ずと言ってもいいほど、変わりたくない現場の人たちから反対の声があがります。その勢いはなんとも激しいものです。「会社が決めたことだから」とか「そっちのほうがよくなるはずだから」といった理屈だけで押し通すことはできません。結局のところ、その人たちが納得して動いてくれないことには、プロジェクトが先に進まないのです。
同じようなことが、それぞれの部署やチームの中でも日々起こっているのではないでしょうか。
新しいものを導入しようとしたら、「今のほうがいい」。ルールを変えようとしたら、「そんな話は聞いていない」。行動を変えるような提案には、「納得できないから動かない」。
変化を嫌う人が同じチームにいるだけで、仕事の進捗に大きな遅れや乱れが生じます。
少し余談ですが、スタートアップ企業には、変化を好む人が集まることが多いそうです。何か新しいことをやろうとしたときに、反対して足を引っ張る人がおらず、彼らを説得することにとられる時間もかからないわけですから、スタートアップ企業がすごいスピードで成長していくこともうなずけます。
さて、ここで変化に対する人々のパターンを整理してみたいと思います。私は、変化に対して3つの態度があると考えています。
① 保守派 … 変化は嫌だ。今のままが一番いい
② 改善派 … 今の延長線上でよくなるのはいいことだ
③ 革新派 … 変化を歓迎。ゼロベースでまったく新しいことに挑戦したい
たとえば、経理部で考えてみたいと思います。
①の保守派の場合、今やっているやり方をそのまま続けようとします。紙での請求書のやりとりは時代にそぐわないと言われても、「うちのやり方はこうなので」と変えようとしません。
②の改善派の場合、経理という仕事の延長でよくなることは歓迎するため、クラウド会計ソフトを導入し、生産性を向上しようという提案を受け入れます。もちろんその導入のための努力も嫌がりません。
③の革新派の場合、そもそも経理部であるという前提条件にとらわれず、「今日から経理業務は外注して、私たちは会社の売上アップのために営業として働こう」というまったくゼロベースでの発想をします。
あなたは、保守、改善、革新のどのスタンスでしょうか? そして、あなたの部下はどのスタンスだと思いますか? 人によってこの変化へのスタンスが異なるということが、組織の問題をややこしくしてしまっているのです。
とくに対策しておきたいのは、他の2つに比べて圧倒的に多い改善派です。改善派の人は、変化に対して「一貫性」を持つことを好みます。よくなることは歓迎しますが、決めたことを守ることも重視する傾向があるのです。つまり、変化の幅が、現状の延長線上であれば喜んで取り組むのですが、今までやったことのないジャンルや、得意ではない領域に踏みだそうとすると、途端に拒絶的になります。そのため、急な前言撤回や、状況に合わせた臨機応変な対応にはついていけません。
トラブルとして一番多いのが、「上司の中では現状認識が変わっているのに、それが部下には伝わっていない」ことです。部下の中では現状認識が以前のままなので、なぜ方針転換をしないといけないのかが理解できず、変化の重要性を感じることができないのです。なので、改善派の部下に変化を求めるときには、なぜ前言を撤回したのか、どうして変化する必要があるのかについて、丁寧に説明する責任があります。
改善派の人からすると、リーダーは「言うことがコロコロ変わる気分屋」に見られてしまいがちです。現状が変わったことをきちんと説明し、単に変化しているのではなく、次のステージに移ったのだと見せる工夫が必要です。とくに革新派のリーダーは、現状が変わり対策が変わるのは当たり前だと思ってしまっています。そのせいで、説明することが面倒だったり無意味に感じて、説明責任を果たしていないケースが多いのです。