成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。
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リーダーにとって、メンバーが共感できる目標を掲げるのは非常に大事です。そして、それと同じように大事だが意外と軽視されているのが、その伝え方です。
目標を決めても、伝える場がなければ掲げていないのと同じ。目標が知られていなければ、共感してもらうことも、チームになることもできません。
こう言うと当たり前のようですが、じつは目標を伝える場をつくっているリーダーは多くありません。
皆さんは、自分の目標を伝える場を持っていますか?
せっかく決めた目標を伝えずに眠らせておくのはもったいなすぎます。今すぐ伝える場を設定しましょう。3つの場をご紹介しますので、自分がやりたいと思えるものを選んでください。
① シートに書き出して貼る
② ミーティングで発表する
③ 会話の「未来比率」を上げる
いきなり口頭でプレゼンするのはハードルが高く感じる人もいるかもしれません。なのでシートに書き出したり、プリントアウトしたりして貼りだしましょう。
前ページにあるような文章を書いて、目立つところに貼ります。それを掲げるだけでもメンバーの反応が変わるはずです。
一番手軽なのは、自部門のミーティングで発表することでしょう。
しかし、ミーティングで発表する場合には、手軽にというよりはむしろ重々しく、重要なことだと伝わるようにプレゼンすることをおすすめします。
定例の部門ミーティングでもいいですし、「方針発表会」と大げさにうたってメンバーを集めても構いません。
「本日、私がどうしても達成したい目標を発表させてください」とメンバーに宣言してください。十分注目を集めたうえで、「私が達成したい目標はこれです」と言い、スクリーンに投写するか、紙に書いたものを貼りだすかして、視覚と聴覚の両方にうったえます。
そして目標を読みあげ、ビフォー、アフター、フューチャーを語ってください。できるだけ思いを込めて話せると、より伝わるはずです。
目標が語れているかどうかは、部下との会話の「未来比率」に表れます。
部下と会話するときに、その話題が「過去」の話なのか、「現在」の話なのか、「未来」の話なのかを分けて考えてみます。
ほとんどのリーダーは、現在のことしか話していません。私はこれを、リーダーの「今月思考」と呼んでいます。リーダーは月単位のノルマに振り回されることが多いからです。
・いま何をしないといけないか
・次の仕事はこれをやって
・いまの問題はなんだろう
というように、いま現在のやるべきことや問題についての話に終始しています。会話だけではなく、頭の中も現在の問題で占められています。中には過去の思い出話に花を咲かせる上司もいるでしょう。部下が知らない昔のエピソードを語ることで、部下との関係性がより近いものになったりするかもしれません。
しかし、未来についてはどうでしょうか。
・これから会社はどうなっていくのか
・私たちの部署はどういう未来を目指すのか
・どんな未来を実現したいと思っているか
会話の未来比率とは、会話に占める未来の割合です。
いま、あなたと部下の会話の未来比率は何%ですか?
お恥ずかしながら、私がリーダーになりたての頃は、未来比率0%でした。未来を語らず、現在と過去だけを語り、部下に希望を持たせていなかったのです。
会話のたびに「これからどうなるのか」「どうしていきたいのか」、そうした未来比率を上げることで、目標に対して本気で向かおうとしている姿勢が伝わるようになります。
目標を伝える場は、日々の会話の中にもつくることができるのです。