管理職やリーダー職でなくても、ある程度経験を積んだ社会人ならば一度は考えたことがあるであろう「人望」について、今回は解説したいと思います。
あなたは人望の厚い人に憧れませんか?
「〇〇さん、一生ついていきます!」
「〇〇さんのためなら頑張れます!」
そんなふうに自分に憧れ、自分を目標にしている部下が相手なら、仕事を任せるのは簡単ですし、チームづくりが非常にしやすくなります。
ではあなたは、自分の人望に自信がありますでしょうか? 自分についてきてくれる部下は何人いるでしょうか?
私は、仕事を通してたくさんのリーダーを見てきましたが、その中には本当に人望の厚いリーダーがいました。人望の厚い上司と部下の関係は、見ていてわかります。共に目指す未来にワクワクしていますし、「こんなことがあったね」と昔話を語り合う姿も本当に楽しそうなのです。ただ一緒に仕事をするのではなく、志を共にし、リスペクトし合い、人生の大切な時を共に過ごす。そんな関係には素直に憧れを感じます。
私も人望の集め方について興味を持ち、いろいろな本を読んできました。もちろん、読むだけで人々から憧れられ、尊敬され、人望を集める人物になれるわけがありません。とはいえ、そうして研究するなかで、人望の厚い人の共通点が見えてきました。
人望を高めることはできるのか? という問いに対して、いまの私の答えはイエスです。「人望は、獲得可能な技術である」と考えています。
人望とは何か、辞書を引くと次のように書かれています。
他人から寄せられる信頼・崇拝・期待の念。
「――を集める」「――のあつい人」(三省堂大辞林第三版)
人望とは、他人から崇拝されるほどの信頼を集め、期待されている状態です。この人ならやってくれるんじゃないか、この人と一緒にいたら人生がもっとよくなるんじゃないか。そういう期待を集める人であるということです。
人望と似た言葉に「人気」がありますが、人望は「仲間」から、人気は「顧客」からの支持を意味します。
「人気があって人望がない人」というのは、スタープレイヤーに多い特徴です。人気の俳優、人気のスポーツ選手、人気の営業マン、人気の事務員さん。これらは、価値を提供する相手には支持されているのですが、一緒に働く仲間から評判が悪いと、人望はないということになります。
人望を研究するなかでもっとも実用的だと感じたのは、弁護士の中坊公平さんが提唱する「リーダーの3つの面」です。
これを理解すると、人望の高め方が見えてくると私は考えています。
・正面の「理」
・側面の「情」
・背面の「恐怖」
正面の「理」とは、ロジカルに説明し、相手を納得させる力のあるリーダー。
そして、側面の「情」とは、周囲の人と愛情深く関わる温かいリーダーです。
最後の背面の「恐怖」とは、この人は裏切れないと思わせる、ほどよい緊張感、ある種の怖さを抱かせるリーダーを指しています。
この3つの面でリーダーをとらえると、1面しか持たないリーダーは「困ったリーダー」と言えそうです。
正面の「理」しかない人は、理屈ばかりで情に薄く、怖さもない。側面の「情」のみの人は、いい人ではあるのですが理屈で説明できず、怖さもない。背面の「恐怖」だけの人は、ロジカルな説明もなく、情も感じられず、ただ怖い。こういったリーダーであれば、なかなか人はついてこないでしょう。
その一方で、2つの面を持つリーダーは一応は「優秀なリーダー」と言えるかもしれません。
正面の「理」と側面の「情」のリーダーは、理屈も言えて情もある。ただ、怖さがないので部下からすれば気安く関われる優しいリーダーですが、ここぞというときに基準が下がるので、率いるチームは「仲良しクラブ」になってしまいがち。
正面の「理」と背面の「恐怖」のリーダーは、理屈が言えて怖さもあるのですが、情が感じられず、冷徹な人と見られがちです。仕事はできても部下の離職が出てしまったり、成果を上げても上司についていきたいと言ってもらえなかったりと、ドライで孤独な上司になりがちです。
側面の「情」と背面の「恐怖」を持ち合わせるリーダーというのは、じつは稀です。この2つの面を持つなら、人望のあるリーダーになるまであともう一歩です。