――ヤクルトの未来、将来について、どんな展望を描いていますか?
小川 シーズン終盤のマツダスタジアム、甲子園球場での試合では、先ほど名前を挙げた村上、廣岡、塩見、中山も含めて、多くの若手が活躍してくれました。これらの選手たちの楽しみは非常に大きいですよね。ただ、チームの駒として、それぞれがきちんと必要とされるような存在になれるか? チームに足りないピースになれるか? そういうことを身につけていってほしい。この4人は、それぞれ長打力があります。でも、それだけではみんな同じタイプの選手ばかりになってしまう。長打力に加えて、何かプラスアルファを身につけられるか? そこがこれからの課題ですね。
――ただ「長打力がある」というだけではなく、そこにどんな個性や特徴を付け加えることができるか、そんなことがこれからは求められてくるんですね。
小川 彼らには一発の魅力があります。でも、それぞれ守備に難があり、塩見以外は特別足が速いわけではない。そうした中で、打つこと以外の自分なりの個性を身につけ、それを磨いて、指導者に「どうしてもこいつを使いたい、使わなければならない」と思わせるような存在の選手になってほしいです。それは、本人たちの考え方ひとつで変わってくるし、身につけることができると思います。
――さて、この2年間で印象に残っている試合はありますか?
小川 やっぱり、去年のクライマックスシリーズ(CS)のノーヒットノーランですね(苦笑)。まさか、ノーヒットノーランで負けるとは、さすがに思ってもいませんでした。あのときのチーム状況を考えると、シーズン終盤にかけてジャイアンツは調子を上げていき、うちは青木(宣親)を負傷で欠いていて下り気味だったんですよね。とはいえ、さすがにCSでノーヒットノーランをやられるとは思いませんでした。
――青木選手の不在が、こんなにチームに大きな打撃をもたらすのだということを改めて痛感したのが、去年のCSでしたね。
小川 そうですね。一人の選手が欠けると、チーム状況は大きく変わります。それが、去年の青木で、今年で言えば西浦(直亨)の離脱でした。だから、山田や村上は別格ですが、さっき名前が挙がった廣岡、塩見、中山たちが主力の穴を完全に埋められる存在になってほしい。バレンティン、青木、雄平の代わりを務められる存在になれば、チーム力も格段に上がると思うんです。
――この2年間、本当にどうもありがとうございました。改めて最後に、この2年間の連載を振り返っていただけますか?
小川 監督というのは孤独なものです。選手たちにはもちろん、コーチに対しても、ときには本音を言えないこともあります。また、僕自身がこういう性格なので、言いたいことをズバズバ言えるタイプではありません。そういう中で、このように定期的に話をする機会をいただけたのは、僕にとってもありがたかったし、自分なりに改めて「組織とは何か?」を考えるきっかけにもなりました。つたない話にもかかわらず、毎回ご覧になって下さったみなさん、どうもありがとうございました。これからも、東京ヤクルトスワローズの応援をよろしくお願いいたします。2年間、本当にどうもありがとうございました。
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