2017シーズンまさかの「96敗」から、昨シーズンセリーグ2位という快進撃を見せたヤクルトスワローズ。ドン底のチームを見事立て直した小川監督は今年、「KEEP ON RISING~躍進~」をスローガンに掲げ、さらなる飛躍を目指す。本連載では2018年シーズンに続き、インタビュアーにスポーツライター長谷川晶一氏を迎え、「躍進」を成せる強いチームをつくるにはどのような采配と決断が必要なのか――小川監督へのタイムリーなインタビューを通じて組織づくりの裏側に迫っていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――まずは明るい話題からいきたいのですが、8月に入って、村上宗隆選手がホームラン、打点を着実に増やしています。これは監督にとっても「嬉しい誤算」なのでは?
小川 さすがに、ここまで数字が残せるとは、正直、思っていませんでしたね。開幕してから、必ずしもずっと順調だったわけではないですけど、5月の「16連敗」以降、チーム状況がなかなか好転せず、「優勝」というところから、どんどん遠ざかってしまったことで、村上を使いやすい状況になったのは確かです。その中で試合に出続けたことで、彼なりに経験を積むことができたので結果を残しているのだと思います。
――しばらくの間、「四番・村上」という時期が続きました。現在はバレンティン選手が四番を務め、村上選手は六番を任される機会が増えています。監督の意識の中では、「四番・村上」については、どのような思いがあるのですか?
小川 決して、他の選手と比較しても遜色はないと判断したから、彼を四番で起用しました。アマチュア時代、彼はずっと「四番」を打ってきていると思いますので、プロの世界でも「四番」に対する思いは強いと思います。しばらくの間、彼を四番に据えたけど、村上にとっては自信をつけた面もあれば、逆に大きなプレッシャーを感じたり、「四番」ということを意識しすぎたことで結果を残せなかったり、いい面も、悪い面もあったと思います。
――後々は、「不動の四番」となることと思いますが、現時点での「四番・村上」については、どのような評価をしていますか?
小川 確かにホームラン、打点に関しては結果を残しているし、「立派な成績だ」と言っていいのかもしれないけど、僕らの求める「四番」ということで言えば、彼はまだまだです。チームが困ったときに何とかしてくれる存在、それが「四番」だと僕は思っています。いきなり完璧を求めるのは酷なのかもしれないけれど、「ここぞ」という場面での凡打の内容だったり、守備面だったり、いろいろな面から見れば、足りない部分があると思っています。あれだけ期待感の大きい選手だからこその注文ではありますけれど。
――廣岡大志選手に関しては、西浦直亨選手の離脱があったとはいえ、なかなか結果が出なくても、辛抱強く使い続けている印象を受けますが、この点に関しては?
小川 廣岡に関しては、まだまだ穴は大きいと思います。たとえば、「ここぞ」という場面での三振が目立ちます。さらに、ストライクゾーンを見逃してしまうことも多い。けれども、彼は試合に出続けることで結果を残してほしいと思っています。少しずつ、結果も出始めているので、試合を通じていろいろ学んでほしいと考えています。守備面で言えば、奥村(展征)がどんどん上手になっているのも感じますね。いずれにしても、若手選手の台頭はチームの今後にとっても、とても大切なことですから。